著者
東根 ちよ Chiyo Higashine
出版者
同志社大学政策学部・総合政策科学研究科政策学会
雑誌
同志社政策科学院生論集 = Doshisha policy and management review
巻号頁・発行日
no.4, pp.39-53, 2015-03-10

本稿は、「有償ボランティア」に関する先行研究を時系列に整理した上で、今後の研究課題について考察を行っている。「有償ボランティア」と称される個人の活動形態は1980年代、高齢者介護分野における会員制の「支え合い」活動の特徴として現れたと考えられている。また1998年のNPO法の施行以降は、会員制の「支え合い」活動のみならず、NPO法人内部における活動形態としても広がりをみせている。一方、「有償ボランティア」の位置づけはかねてから曖昧なまま運営され続けており、その点が時として「有償ボランティア」に過度の負担を強いたり、既存の法制度の適用に関して実務的な課題を生じさせたりしている。そのような中、本稿の考察では「有償ボランティア」には個人として独立して活動を行う「個人形態」と、組織の一員として活動を行う「組織所属形態」の二つの形態が存在することを確認している。加えて、今後の「有償ボランティア」研究には、実証的研究の蓄積と、先行研究で示される四つの基盤整備の方向性に関して具体的な検討が求められることを示している。研究ノート(Note)