著者
Daniel C. Fickle Danny W. Scott Jeanine Peters-Kennedy Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.97-103, 2016 (Released:2016-07-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1

今回の研究目的は,犬の酵母による皮膚炎における毛嚢脂腺の異形成の病理組織学的所見,出現率そして関連性についてである。670頭の犬の非腫瘍性皮膚症および28頭の健常犬からのHE染色した皮膚生検試料について,光学顕微鏡学的に行った回顧的な研究である。犬の酵母による皮膚炎,正常皮膚,非酵母性皮膚症における毛嚢脂腺の異形成の発生率および存在量を比較するために,カイ二乗および順位和検定を行った。犬の酵母による皮膚炎における毛嚢脂腺の異形成は,98頭中76頭(78%;95%の信頼水準で,68~85%の信頼区間)で,非酵母性皮膚症では14頭中572頭(2.4%;95%の信頼水準で,1.4~4.2%の信頼区間)であった。毛嚢脂腺の異形成は,正常犬では認められなかった(95%の信頼水準で,0~15%の信頼区間)であった。毛嚢脂腺の異形成の発生率(存在する/しない)は,非酵母性皮膚症および正常犬に比べて,酵母による皮膚炎において顕著に有意差が認められた(カイ二乗検定=424.49;自由度2;p<0.0001)。またこれらの群における毛嚢脂腺の異形成の病変単位の%は,非酵母性皮膚症(一頭当たりの病変単位,最少3%;平均30%;最大100%)に比べて,酵母による皮膚炎(最少12%;平均75%;最大100%)において顕著に多かった。毛嚢脂腺の異形成の発生率は,非酵母性皮膚症および正常犬において有意な差は存在しなかった(p≥0.05)。犬の皮膚生検試料の毛嚢脂腺の異形成の存在についてのこれらの所見は,酵母性皮膚症が顕著に関連し,そして組織学的診断になると考えられた。