著者
福山 泰広 西山 優太 上野 宥那 依田 信一朗 田村 咲絵 岩田 和也 近藤 佑衣 川原井 晋平 圓尾 拓也
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.199-205, 2022 (Released:2022-12-15)
参考文献数
14

自壊した皮膚腫瘍(出血,感染,悪臭)は局所腫瘍の進行病変で治療困難なことがある。この治療のためにカルボキシメチルセルロース(CMC)を基剤とした変更Mohsペースト(moM-CMC)1.0を作成したが,保存できないという問題があった。塩化亜鉛 5 g,蒸留水 2.5 ml,CMC 0.75 gを混合し湯煎すると糊状ゾルとなり直ちに使用可能であるとともに3ヶ月保存できた。このmoM-CMC 2.0を犬8頭,猫2頭の自壊した皮膚腫瘤に対して使用した。臨床徴候として全例で自壊に加えて悪臭があり,7頭で出血が認められた。診断は乳腺癌2頭,耳介の肥満細胞腫,口腔扁平上皮癌,皮膚扁平上皮癌,皮膚組織球肉腫が各1頭ずつ,病理検査を行なっていないものは,耳道の腫瘤2頭,乳腺腫瘤,頸部皮膚腫瘤が各1頭であった。塗布すると水分を吸収しゲルとなった。治療時間は中央値30分(幅,10–60分),回数の中央値2回(幅,1–11回),間隔は1週毎,治療期間の中央値2週間(0–20)であった。治療反応は一時的には完全奏功3頭,部分奏功1頭,安定5頭,増大1頭であった。出血は7頭中6頭で改善し,臭いも全例で改善した。合併症として潰瘍部の拡大が4頭で認められ,自傷行為が2頭で認められた。このことから合併症はあるものの保存していたもので直ちに使用が可能であり,自壊した皮膚腫瘍の緩和治療が容易になる可能性がある。
著者
寺島 美穂 久野 格 深町 輝康 今西 市朗 江角 真梨子 伊從 慶太
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-10, 2020 (Released:2021-03-30)
参考文献数
23

本研究は犬アトピー性皮膚炎に各種セラミド製剤を適応し,オクラシチニブの減薬効果を検討した。合計16例のアトピー性皮膚炎の犬が本試験に供され,すべての症例はオクラシチニブ(0.4–0.6 mg/kg,1日1回,経口投与)の全身投与を3ヶ月以上受けていた。症例は無作為に2群に振り分け,それぞれ毎日の経口および外用スプレーのセラミド製剤,1週毎のスポットオンセラミド製剤を84日間適用した。すべての症例においてオクラシチニブが継続投与され,試験開始から42日目までは常用量(0.4–0.6 mg/kg,1日1回),42–63日において常用量の半量(0.2–0.3 mg/kg,1日1回),63–84日において常用量の半量を隔日投与とした。試験開始より3週毎,84日間にわたって,獣医師により犬アトピー性皮膚炎重症度指数(CADESI-04)を,飼い主により痒みスコア(PVAS)が評価された。両群ともにオクラシチニブ減薬後のCADESI-04およびPVASの平均スコアは,オクラシチニブ減薬前と比較して有意な差は認めなかった(P>0.05)。また,各評価日における各スコアの群間差も認められなかった(P>0.05)。以上の結果より,今回試験に供した外用スプレーおよび経口セラミド製剤,スポットオンセラミド製剤は,いずれもCADにおけるオクラシチニブの全身療法の減薬に貢献した可能性が示唆された。
著者
長谷 晃輔 長谷 生子 下山 由美子 西藤 公司
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.75-78, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
6

雑種猫,3歳3ヶ月齢,未去勢雄に多発性丘疹結節および腫瘤,ならびに皮膚硬化が認められた。皮膚生検の検体および斃死後の剖検検体を病理組織学検査に供したところ,皮膚腫瘤/結節および硬化部位の皮膚のみならず,骨格筋膜や臓器漿膜にも広範囲に紡錘形細胞の増殖が認められ,皮膚結節の一部では線維肉腫に矛盾のない組織像が認められた。抗猫白血病ウイルス抗体を用いた免疫染色では,前述した紡錘形細胞の細胞質が陽性となったことから,前述の組織学的変化が猫白血病ウイルスまたは猫肉腫ウイルスに関連した可能性が示唆された。
著者
今道 昭一
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.69-73, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

3ヵ月齢,未避妊雌のロシアンブルーで,生後87日目に2回目の猫3種混合ワクチンを接種。その17日後から耳介,頭部,肉球および爪周囲の潰瘍を発症し,爪周囲には乾酪様滲出物を認めた。皮膚病理組織学的検査では,多数の棘融解細胞を含む角層下膿疱が認められた。これらは猫の落葉状天疱瘡を示唆する所見であった。皮疹は拡大傾向にあったため,プレドニゾロンを漸減しながら121日間投与し略治した。現在,全ての治療が終了してから2年を経過しているが,再発は見られない。病態として,猫3種混合ワクチンに誘発された落葉状天疱瘡を疑った。
著者
佐藤 良彦 佐藤 良平
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.199-203, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
11

10歳齢の猫が右下眼瞼の小結節から出血し受診した。結節は59日後に直径10 mmに増大し,外科的に切除した。病理組織検査で腫瘍細胞は血管内皮に酷似し,ビメンチンと第VIII因子関連抗原の免疫染色で陽性を示したことから血管肉腫と診断した。術後トセラニブを投与したが,38日目に下眼瞼の小結節から出血し受診した。結節は43日目に20 mmに増大したため同剤の投与を中止し,βグルカン製剤を投与した。結節は87日目に25 mmに増大したが出血は著減,104日目に出血もなく脱落し320日目も消失を維持している。
著者
Matthew Levinson Russell Muse
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-6, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
11

12歳の去勢済,シベリアン・ハスキーに,機能性甲状腺癌に随伴すると考えられた脱毛,膿皮症および下痢が認められたため精査加療を行った。甲状腺摘出術と術後の甲状腺ホルモン補充療法により全ての臨床症状が消失した。また治療開始後1年の間,脱毛や膿皮症,消化器症状の再発などは認められなかった。著者らの知る限り,本論文は機能性甲状腺癌に随伴して被毛や皮膚,消化器に異常を認めた犬に関する初めての報告である。
著者
清水 裕子 横山 真緒 清水 栄治 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.201-205, 2009 (Released:2010-03-11)
参考文献数
7

ペットショップ自家製ドッグフードを与えられていた5歳齢,去勢雄,ミニチュア・ダックスフンドの口囲に鱗屑,肉球に糜爛潰瘍,包皮先端・肛囲に糜爛が生じ当院を受診した。全身症状はなく,血液検査で特記すべき異常も認めなかった。病理組織学的検査では,表皮および毛包内の不全角化と真皮浅層の炎症がみられた。ジェネリック・ドッグフード皮膚症を疑い,食事として適切なミネラルを含量し,亜鉛や必須脂肪酸が増強されたセレクトプロテインライト(コッド&ライス)ドライフード(ロイヤルカナンジャポン,東京)に変更したところ,約1週間で改善傾向がみられ,4週後に軽快した。後日実施したフードの食品分析結果において,亜鉛と銅がAAFCOの成犬最小栄養素許容量以下であった。
著者
澤 由貴 周本 剛大 横山 岳生 三井 一鬼 兼島 孝
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-19, 2020 (Released:2020-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

掻痒性皮膚炎をシクロスポリンA(CyA)で治療していた,去勢オス,8歳のスコティッシュフォールドが慢性の消化器症状を主訴に来院した。A/G比の低下,抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体価の上昇を認めたため,免疫力低下からのFCoV持続感染を疑いCyAを休薬した。その後,掻痒の管理が困難になったためにオクラシチニブを使用したところ,消化器症状は改善して抗FCoV抗体価も低下した。しかし1年半後に腎臓に腫瘤を認めリンパ腫と診断したため使用を休止した。オクラシチニブは猫の掻痒性皮膚炎に効果を示すが,高用量投与時の免疫抑制には注意すべきだと考えられる。
著者
赤司 和昭 中村 泰治 伊從 慶太 大隅 尊史
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.217-220, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
16

ベンガル,1歳1ヶ月齢,未去勢雄が,8ヶ月前から継続する両耳の耳垢蓄積および瘙痒を主訴に来院した。耳垢の直接鏡検でDemodex catiに形態学的に合致するニキビダニの生存虫体が多数検出された。その他の皮膚に症状は認めなかった。10%イミダクロプリド/1%モキシデクチン製剤0.8 mlを2週間毎,計4回背部に塗布したが,ニキビダニは消失しなかった。その後,フルララネル製剤(約41 mg/kg)を単回経口投与したところ,投与39日目後に症状の改善およびニキビダニの陰転を認めた。
著者
内田 二依菜 園田 祐三 熊倉 梓 金井 泉 今井 昭宏 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.211-214, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
11

1歳齢,避妊雌のヒマラヤンの側腹部,尾根部,前胸部に外傷性脱毛がみられ,体幹触診時に過剰な舐め行動が誘導された。プレドニゾロン,選択的セロトニン再吸収阻害薬,神経障害性疼痛治療薬にて改善するも,プレドニゾロン休薬に合わせ再発を繰り返し,その後認められた落屑性脱毛からDemodex gatoiを検出した。フルララネル製剤を投薬し2ヶ月後に軽快,D. gatoiも陰性になった。これまで使用していた投薬を終了後外傷性脱毛が再発,フルララネル製剤3ヶ月毎投与とともにプレガバリンとフルオキセチンの再導入により寛解,プレドニゾロンとフルララネル製剤を休薬することができた。D. gatoi寄生とネコ知覚過敏症候群との関係を考察した。
著者
Daniel C. Fickle Danny W. Scott Jeanine Peters-Kennedy Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.97-103, 2016 (Released:2016-07-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1

今回の研究目的は,犬の酵母による皮膚炎における毛嚢脂腺の異形成の病理組織学的所見,出現率そして関連性についてである。670頭の犬の非腫瘍性皮膚症および28頭の健常犬からのHE染色した皮膚生検試料について,光学顕微鏡学的に行った回顧的な研究である。犬の酵母による皮膚炎,正常皮膚,非酵母性皮膚症における毛嚢脂腺の異形成の発生率および存在量を比較するために,カイ二乗および順位和検定を行った。犬の酵母による皮膚炎における毛嚢脂腺の異形成は,98頭中76頭(78%;95%の信頼水準で,68~85%の信頼区間)で,非酵母性皮膚症では14頭中572頭(2.4%;95%の信頼水準で,1.4~4.2%の信頼区間)であった。毛嚢脂腺の異形成は,正常犬では認められなかった(95%の信頼水準で,0~15%の信頼区間)であった。毛嚢脂腺の異形成の発生率(存在する/しない)は,非酵母性皮膚症および正常犬に比べて,酵母による皮膚炎において顕著に有意差が認められた(カイ二乗検定=424.49;自由度2;p<0.0001)。またこれらの群における毛嚢脂腺の異形成の病変単位の%は,非酵母性皮膚症(一頭当たりの病変単位,最少3%;平均30%;最大100%)に比べて,酵母による皮膚炎(最少12%;平均75%;最大100%)において顕著に多かった。毛嚢脂腺の異形成の発生率は,非酵母性皮膚症および正常犬において有意な差は存在しなかった(p≥0.05)。犬の皮膚生検試料の毛嚢脂腺の異形成の存在についてのこれらの所見は,酵母性皮膚症が顕著に関連し,そして組織学的診断になると考えられた。
著者
五十嵐 里菜 馬場 悠太 平林 雅和 伊從 慶太 大隅 尊史
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.153-156, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

ブリティッシュ・ショートヘアー,4歳4ヶ月齢,未去勢雄が両外耳道および耳介周囲に多発性の黒〜灰色,ドーム状の隆起性病変を呈した。病理組織学的検査によって,Feline ceruminous cystomatosisと診断された。自宅での点耳治療が困難であったため,病院での耳洗浄および1%フロルフェニコール,1%テルビナフィン,0.1%ベタメタゾン酢酸エステル配合の点耳ゲル剤による治療を計3回実施したところ,約3ヶ月以内に病変の著しい退縮を認め,最終投与の約6ヶ月後に至るまで再発を認めなかった。
著者
吉政 甫 池 順子 作野 幸孝 吉田 恭治
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-26, 2020 (Released:2021-03-30)
参考文献数
9

7歳齢,未去勢雄の雑種犬。他院より難治性の皮膚炎として当院を紹介受診。紹介される1年ほど前より包皮周囲の皮膚炎の治療を受けていた。医原性クッシング及びステロイド皮膚症と診断,経口のプレドニゾロンを漸減し,ステロイド含有の外用薬の塗布を中止したところ,5ヶ月程でほぼ略治したが,その約1ヶ月後に包皮の先端にマス様病変が認められ,病変部位の組織生検より皮膚上皮向性T細胞性リンパ腫と診断した。外科切除を実施後およそ10ヶ月間,完全寛解の状態を維持している。
著者
藤森 基成 泉 憲明 永田 雅彦
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.247-249, 2006
被引用文献数
1

2歳齢,雄のロングコート・チワワの両眼瞼縁に限局し徐々に悪化する丘疹の集簇を認めた。経口抗生剤にて改善なく皮膚病理組織検査を施行したところ,真皮に多巣状の化膿性肉芽腫を認めた。PAS染色で菌要素を認めず特発性非感染性肉芽腫症と診断した。経口プレドニゾロン1.0 mg/kg SIDにて1週間で劇的に改善した。<br>
著者
Scott Danny W. Miller Jr. William H.
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.203-210, 2013
被引用文献数
10

48例の猫が食物アレルギー性皮膚炎と診断された。過去15年において本症と診断された猫の頻度は皮膚疾患症例の3.4%,ならびに全疾患症例の0.2%を占めた。性差や年齢差は認められなかったが,バーミーズ,ヒマラヤン,メイン・クーンに好発する傾向があった。皮膚における反応パターンは発症頻度の高いものから順に,皮疹を伴わない左右対称性のかゆみ動作~表皮剥離(特に顔面,耳介および頸部),皮膚に異常を認めない外傷性脱毛症(特に腹部,四肢および背部),粟粒性皮膚炎(特に背部および頸部),ならびに好酸球性肉芽腫群(特に口唇)であった。皮膚における複数の反応パターンの合併は54.2%の猫に認められた。続発性細菌感染症は18.8%の猫に認められた。消化器症状が合併した猫の頻度はわずか2.1%であった。アトピー性皮膚炎が合併した猫の頻度は18.8%であった。グルココルチコイド製剤が全身投与された猫のうち,同治療が奏功しなかった猫の頻度は60.9% であった。食事管理は6ヶ月から11年の追跡調査の期間中有効であった。<br>