著者
土井 裕貴 ドイ ユウキ Doi Yuki
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.83-95, 2014-03-31

本稿は、対人援助職従事者において近年問題となっているバーンアウト、バーンアウトに関わる概念として着目されている感情労働などについて概観し、その関係性と今後の研究展望、課題について述べたものである。バーンアウトと感情労働の関係については、感情労働の遂行自体がポジティブな面、ネガティブな面の両面を兼ね備えているという見解が主であること、更には感情労働ではなく、感情労働をしたくてもできない状況がバーンアウトに関係があるとの報告も見受けられ、複雑な関係性を取っているということが明らかとなった。共感疲労については、研究対象が限られており、今後の蓄積が必要だと明らかになった。これらの現状を踏まえ、バーンアウト、感情労働、共感疲労について検討した結果、それぞれの共通課題として質的なアプローチによる丁寧な記述が必要だということ、また、対人援助職の「しんどさ」を描くために包括的な概念として精神的な疲労に着目する必要性が示唆された。