著者
片倉 賢 ELKHATEEB A.M. ELKHATEEB A.M
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ヒトや家畜のトリパノソーマ症は発展途上国で蔓延している原虫性疾患であるが、予防・治療薬の開発が進んでいないNeglected Tropical Diseases(NTD、顧みなれない熱帯病)である。申請者らは、安全で安価な治療薬の開発を目的として、薬用植物から天然の抗寄生虫活性物質を含む植物の探索を行った。その結果、ニガキ科の薬用植物であるBrucea javanicaに含まれるクアシノイド類が強力な抗トリパノソーマ原虫(Trypanosoma evansi)活性をもっていること、およびクアシノイドの構造と活性とに相関があることを明らかにしてきた。平成23年度は、クアシノイド類が原虫のどの器官を標的としているかを明らかにするためにbruceine類の安定同位体ラベル誘導体の合成を試みた。すなわち、重水素ラベル無水酢酸を用いて重水素ラベルbruceine Aとbruceine Cのアセチル誘導体を合成した(Elkhateeb et al, 2012)。これをトリパノソーマ原虫に作用させ、安定同位体顕微鏡システムを用いて観察した。その結果、解像度は薬剤のターゲット器官を認識できる程度であったが、蓄積した同位体ラベル化合物の検出にはいたらなかった。安定同位体ラベル誘導体の標識部位がアセチル基のメチル基のみであったことが原因と考えられたため、今後は安定同位体ラベル部位を増やし検出感度をあげることが必要である。