著者
Edurise Escuadra Gina M. 宇佐見 俊行 雨宮 良幹
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.21-29, 2008-03

種々の有機質素材からなる堆肥を用い、Fusarium oxysporum f. sp. spinaciaeによって引き起こされるホウレンソウ萎凋病の発病に及ばす影響を評価するとともに、土壌中の微生物と病原菌に対する影響について調査した。堆肥はコムギフスマ、コムギフスマ・オガクズ、コーヒー粕、鶏ふん、およびこれらの混合物に5%のカニ殻粉末を無添加または添加したものを供試した。各堆肥を病原菌汚染土壌に5%(w/w)添加し、その30日後からホウレンソウを約1ヶ月ずつ連続して栽培し、2作後には堆肥をさらに2.5%追加施用した。その結果、各堆肥施用区とも2作目以降から発病が顕著に抑制されるようになり、特に混合堆肥施用区でその効果が高かった。FDA(fluorescein diacetate)分解活性を指標に土壌中の微生物活性を調べたところ、これらの堆肥施用土壌ではいずれの栽培時においても無処理の土壌に比べてその値が高く、希釈平板法で検出される糸状菌、細菌、放線菌の密度もそれに対応して増加していた。これら微生物群の中では細菌の増加が特に顕著であった。さらに、細菌を対象としたプライマーを用いてPCR-DGGE (denaturing gradient gel electrophoresis)解析を行った結果、堆肥施用に伴って土壌中の細菌群集構造が多権化していることが伺えた。また、堆肥を施用した土壌ではいずれも無処理の土壌に比べて病原菌の胞子発芽が抑制れる傾向が見られた。以上の結果より、堆肥施用に伴う発病抑止機構の一つとして、多様化・活性化した土壌微生物の競合や拮抗など様々な機能の総合的作用によって土壌の静菌作用が強化され、病原菌の活動が抑制されることが考えられた。