著者
田村 匡嗣 小川 幸春 井川 憲明
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.64, pp.19-23, 2010-03

ブラックチョコレート作製におけるより好ましいカカオバター量の割合や適切なヤシ油の添加割合を検討した。カカオバター量を調製した6条件(30.3から49.2%)、およびヤシ油を添加した2条件(0.5%、 1.0%)に対し粘度、破断エネルギ、色差の物理的測定と官能検査を行った。物理的測定の結果はカカオバター量の割合により大きく変化し、色彩に対する官能検査ではカカオバター量割合37.0%の試料が他と比較して有意に好まれた。口どけ、歯応えに対する官能試験の結果に顕著な差はみられなかったが、37.0%の試料が比較的好まれる傾向を示した。以上の結果を踏まえてカカオバター量割合37.0%の試料を基準にヤシ油の添加割合を変えて試料を試作した。ヤシ油添加試料の口どけ、歯応えに対する官能検査の結果に有意差はみられなかったが、口どけは添加量が多いほど好まれる傾向がみられた。色彩はヤシ油を添加した試料の方が有意に好まれた。以上より、ヤシ油はカカオバターの代用油脂となるだけではなく、0.5から1.0%程度添加することでチョコレートの食感を向上させ得ることが示唆された。
著者
宮下 佳廣 渡辺 均 岩崎 寛 渡辺 均 Hitoshi Watanabe ワタナベ ヒトシ 岩崎 寛 Yutaka Iwasaki イワサキ ユタカ 山口 利隆 Toshitaka Yamaguchi ヤマグチ トシタカ
出版者
千葉大学大学院園芸学研究科
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.64, pp.77-89, 2010-03

2009年,千葉大学園芸学部は創立100周年を迎えた.今日までの多くの研究業績を踏まえ新たな世紀に向けて取り組むテーマの一つとして,2010年から園芸学部と戸定会との共同による社会貢献教育プログラムをスタートさせる.修了者には資格として「環境園芸士」を授与することで検討を進めている.その目的は園芸技術を広め園芸文化を高めることにある.対象は社会人と学生を含めた市民の園芸愛好者・園芸入門者である.教育プログラムの内容は花卉,蔬菜,果樹・植木の各専門科目とし,個人の趣味園芸のレベル向上と「花と緑の街づくり」の指導者養成を目指し,2010年9月に花卉のプログラムから開始する予定である. 本稿の筆頭者は,「環境園芸士」の提案者として,100周年記念行事の一環として進められた「園芸資格制度検討委員会」(第1表)の発起人の一人となった.本稿は,「園芸資格制度検討委員会」設立の経緯と活動状況,及び「環境園芸士」資格制度に関する調査・研究の経過を著わすものである.In 2009, 100 years had passed since Faculty of Horticulture, Chiba University was established. To spread knowledgewhich has been achieved in these 100 years, university staffs and alumni will start a program, called 'EnvironmentalGardener' as a part of memorial events. The aim of this program is to spread technologies of horticultureand to enrich cultures of horticulture. A certifi cation is going to be given for people who fi nished this program.There are four courses for this program: fl owers, vegetables, fruits and garden plants. This is designed for studentsand members of society. The fl ower course will start September 2010 at fi rst. Each course has lectures on basicplant knowledge such as plant cultivation, plant physiology, ecology, soil, fertilizer, pest control and garden design,as well as practices at university farm.
著者
小林 真生子 那須 智子 Greenthumb B. 沖津 進
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.67, pp.35-42, 2013-03

近年,海岸部の埋め立て地域は工場や港湾施設の他に,千葉県千葉市の海浜幕張地区や千葉県浦安市,東京都品川区のように,住宅地としても利用されている。これらの地域は高層住宅や商業施設が建設され,人口が密集する地域でもある。人工的な埋立地では,樹木を植栽しなければ緑がなく,街路樹の重要性は,斜面林や社寺林や屋敷林などが残る内陸部の非埋立地よりも大きいといえる。海岸部の街路樹は,潮風を緩和したり,埋立地の景観を改善したりするうえで重要である。本研究では,千葉県千葉市の海岸部埋め立て地域に植栽された針葉樹1種と広葉樹9種の街路樹の10年間の生育状態の調査結果を報告し,関東地方の海岸部埋め立て地域の街路樹種として適する樹種を考察した。
著者
近江屋 一朗 中村 攻 齋藤 雪彦 鳥井 幸恵 田中 史郎
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.59-69, 2008-03

本研究は子どもの遊び環境の一つとして,現在その遊び環境としての機能が低下していると考えられる,下校路の将来あるべき像を描くためのものである.そのために50代以上,30代・40代,20代以下の回答者それぞれの下校行動の特徴を(1)下校ルート(2)下校時の行動と環境(3)下校ルートにおける仲間の有無から明らかにした.その結果,直帰型,Uターン型,選択型,複合型の5つに分けられた下校パターンは世代によって割合が変化しており,若い世代では下校ルートを能動的に使い分けない直帰型やUターン型の帰り方が多くなっていた.また,下校パターンと下校時の行動にも関係性が見られ,複数の道を使う帰り方で下校時の行動は活発であった.40代以下から増え始めた遠回り型や複合型は遊びや友達を得るために子どもたちが遠いルートでも利用しているということを示していると考えられた.これらより,今後の下校路には遊び環境の充実と共に幅広い道の選択を許容することの重要性が示された.
著者
松浦 元樹 田川 彰男 小川 幸春
出版者
千葉大学園芸学部
巻号頁・発行日
no.65, pp.55-59, 2011 (Released:2012-12-06)

クリープメータによる計測結果および市販のデジタルカメラで取得した画像を利用することで農産物・食品素材のヤング率およびポアソン比を計測した.画像計測は非接触のまま変形量の評価が可能であるため,煮熟された食品素材のように軟弱な試料であってもその変化を精密に解析することが可能であった.本手法を適用して,煮熟時間の経過に伴うダイコンおよびニンジンのポアソン比とヤング率の変化を計測したところ,ヤング率は沸騰水に投入直後から著しく低下するのに対し,ポアソン比の変化は緩慢であることが明らかとなった.またヤング率はダイコン,ニンジンともほぼ同様の値を示したが,ポアソン比はダイコンの方がニンジンよりも大きな値を示した.画像を利用した弾性的特性値の計測,評価法は,例えば食品素材の嚥下特性評価にも有効であると考えられる.
著者
白銀 隼人 宍戸 雅宏
出版者
千葉大学大学院園芸学研究科
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.67, pp.69-73, 2013-03

White root rot of Japanse pear caused by Rosellinia necatrix was investigated in two orchards of the Center forEnvironment, Health and Field Sciences, Chiba University. The bait twig method coupled with PCR primers specificto the fungus indicated at least 28.9% of Japanese pear trees were infected with the pathogen. Because the detectionefficiency of the method is often less than 80 % , the disease was likey more prevalent than the detectedsamples in the orchards. Furthermore, Japanese pear trees that R. necatrix was detected had significantly shorternew shoots than trees that the pathogen was undetected, showing negative impact of the disease infection on thegrowth of host plants. Genetic polymorhisms of R. necatrix isolated from the orchard and other areas of Japan, inaddition to kin speceis: R. aquila and R. compacta, based on six UP-PCR primers exhibited no identical polymorphicpatterns among these Rosellinia isolates. This result suggests that R. necatrix of the orchard is genetically differentfrom isolates living in other areas of Japan.
著者
伊野 唯我 栗原 伸一 霜浦 森平 大江 靖雄
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.63, pp.83-88, 2009-03

近年、わが国ではBSE(牛海綿状脳症)や高病原性鳥インフルエンザ、そして各種の偽装表示の発覚など、食品に対する消費者の信頼を失墜させる事件や問題が次々に発生している。ここ最近でも、2007年1月に起きたテレビ健康番組での納豆に関するデータ捏造事件や、2008年9月に発覚した事故米の不正転売事件など、枚挙にいとまがない。そして、カイワレ大根や低脂肪牛乳の様に、一度(ひとたび)問題が明るみになると、その消費がなかなか回復されない食品も多い。こうした状況を生んだ原因の一つは、経済成長と共に進んだ食の外部化が、結果としてフード・チェインを延長したことにある。そのため、安全性を自ら調べることの出来ない末端の消費者が、新聞やテレビなどから得た一方的な安全性に関する情報のみに頼って購入せざるを得ない状況になってしまったのだろう。そこで本研究では、そうした食品の安全性や危険性に関する情報が、消費者行動にどのような影響を与えているのかを計量的に分析する。
著者
齋藤 政則 篠山 浩文 齋藤 明広 篠山 浩文 安藤 昭一 シノヤマ ヒロフミ 齋藤 明広 Akihiro Saito サイトウ アキヒロ 知久 和寛 Kazuhiro Chiku チク カズヒロ 安藤 昭一 Akikazu Ando アンドウ アキカズ
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.64, pp.35-41, 2010-03

市販されている各種糸状菌由来の糖質分解酵素剤に注目し、加水分解活性が弱く配糖化活性が強い酵素の有無を調べ、その精製を試みた。その結果、Trichoderma sp.由来の市販キシラン分解酵素剤に、キシランのみを基質とした場合、その加水分解活性がないにも関わらず、キシランとカテコール共存下ではキシランを分解しカテコールを配糖化する酵素が認められた。本酵素は分子量約73,000の単量体で機能するものであり、20残基のN末端アミノ酸配列は既知のキシラナーゼと相同性が認められなかった。これらの諸性質から本酵素は新規であることが示唆された。至適pHと至適温度はそれぞれ4.0と40℃であった。
著者
塚越 覚 犬塚 沙織 北条 雅章 池上 文雄 武永 早苗 中尾 千草 瓜生 登 萩原 俊彦 膏木 仁史 花村 高行
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.65, pp.81-86, 2011-03 (Released:2012-12-06)

野菜の中でも地方品種が多く,古くから地域の食生活に根付いてきたダイコン(Raphanus sativus L. Daikon Group)について,官能試験および「性味」に関連すると考えられる各種成分含有率をもとに,薬膳素材としての適性という観点からの評価を試みた.一般的なF1品種に加え,地方品種といわれる11品種群16品種を試験に用いた.主成分分析による予備評価の結果.'信州地大根'と‘聖護院'が薬膳素材としての適性が高い品種である可能性が示された.そこでこれら2品種とF1品種について,さらに詳細に比較した結果,'信州地大根'はショ糖,GABA,総アミノ酸,イソチオシアネート含有量が非常に高い品種であった.特にGABA含有量はF1品種の5倍,イソチオシアネート含有量は4.5倍であった.また‘聖護院' もGABA.総アミノ酸,イソチオシアネート含有量がF1品種より高かった.これらのことから,今回の試験に用いた品種の中では,風味が強く,機能性に関連すると考えられる成分の含有量も高い‘信州地大根'が,最も薬膳素材としての適性が高いと考えられた.
著者
松浦 元樹 田川 彰男 小川 幸春 Akio Tagawa 小川 幸春 Yukiharu Ogawa
出版者
千葉大学大学院園芸学研究科
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.65, pp.55-59, 2011-03

Young's modulus and Poisson's ratio, which characterized elastic properties of a material, were measured bymeans of compress utensil and digital images captured by digital camera, and the elastic values were evaluated. Atissue of boiled Japanese radish and carrot root, which is too fragile to measure their Poisson's ratio by traditionalmethods, was used as sample materials. Cylindrical samples were cut out of the tissue using a precise apparatusand their dimensions were set to 15mm height and 30mm diameter. The samples were then compressed. The stressof the samples against compression was measured using a creep meter. The compressed deformation of the sampleswas captured by a digital camera and accurately analyzed by high resolution digital images. The Poisson's ratio wascalculated from differences in the sample deformation in digital images. A Young's modulus was also calculatedfrom the compressed deformation and the stress. As a result, the Poisson's ratio of boiled Japanese radish wasfound to be constant or slightly decrease with boiling elapsed time. The Poisson's ratio of carrot also decreasedwith boiling, and its value was smaller than the Japanese radish's. On the other hand, the Young's modulus for eachsample decreased sharply when boiling started but after 4 minutes boiling it was stabilized at low values.
著者
伊藤 史朗 佐藤 友美 栗原 伸一
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.63, pp.77-82, 2009-03

最古のセラピーの一つと言われる園芸活動の効果について学術的な報告が行われたのは、1699年のイギリスにおける研究が最初であり、その後、第一次世界大戦を機にアメリカでは園芸療法が広く普及した。一方、わが国では、園芸療法や園芸セラピーといった言葉が、90年代に入りようやく使われ出した。その後は順調に普及し、現在では多くの医療・福祉施設や教育機関において作業療法や能力開発手段の柱として導入されている。しかしながら、林らによる先行研究などいくつかの分析例は存在するが、医療や教育面における園芸活動の研究が近年大きく進んでいるにもかかわらず、一般的な趣味であるという認識のために、市民に対してもたらされる効果については余り注目されてこなかった。そこで本研究では、そうした園芸活動の持つ心理的効果を広く捉え、地域社会や社会・環境問題などに対する意識や活動との関連性を構造的に明らかにすることを目的とした。具体的には、松戸市周辺において園芸活動を行っている市民とそうでない市民の両者を対象に実施した意識調査の結果に「グラフィカル因果分析」を適用する。
著者
増田 絹子 岩崎 寛 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.27-40, 2007-03-31

本研究では,日本でみられる多様な植物との関わりについて検討するために,植物由来の色名について,その意味や成立背景に基づいて把握し,そして戦前から近年におけるこれらの色名の推移を調査し,植物との関わりが色名の推移にどう反映されているのかを分析した.日本の植物由来色名は染料植物由来色名に始まり,植物様態由来色名,染法用語由来色名,欧米起源の植物由来色名で構成されることが確認された.染料植物由来色名については,アイ,クレナイ以外の植物に由来する染めの程度を示す色名や重ね染めを意味する色名,染料植物の婉曲表現の色名が衰退していたことから,植物を染料として利用する機会やこれらの染め色を目にする機会が減少していることが示唆された。植物様態由来色名については,微妙な色の差異を示し,より細かい季節を象徴する色名が衰退していたことや,植物の俗称や別名の色名が衰退していたことから,身近な植物への関心の低下や身近な植物の減少が示唆された.欧米起源の植物由来色名においては,盛んに交替する性質があり,植物名から色がイメージされるまで定着しているものが少なかったことから,色名の対象となった植物の存在が軽視されていることが示唆された.
著者
Edurise Escuadra Gina M. 宇佐見 俊行 雨宮 良幹
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.21-29, 2008-03

種々の有機質素材からなる堆肥を用い、Fusarium oxysporum f. sp. spinaciaeによって引き起こされるホウレンソウ萎凋病の発病に及ばす影響を評価するとともに、土壌中の微生物と病原菌に対する影響について調査した。堆肥はコムギフスマ、コムギフスマ・オガクズ、コーヒー粕、鶏ふん、およびこれらの混合物に5%のカニ殻粉末を無添加または添加したものを供試した。各堆肥を病原菌汚染土壌に5%(w/w)添加し、その30日後からホウレンソウを約1ヶ月ずつ連続して栽培し、2作後には堆肥をさらに2.5%追加施用した。その結果、各堆肥施用区とも2作目以降から発病が顕著に抑制されるようになり、特に混合堆肥施用区でその効果が高かった。FDA(fluorescein diacetate)分解活性を指標に土壌中の微生物活性を調べたところ、これらの堆肥施用土壌ではいずれの栽培時においても無処理の土壌に比べてその値が高く、希釈平板法で検出される糸状菌、細菌、放線菌の密度もそれに対応して増加していた。これら微生物群の中では細菌の増加が特に顕著であった。さらに、細菌を対象としたプライマーを用いてPCR-DGGE (denaturing gradient gel electrophoresis)解析を行った結果、堆肥施用に伴って土壌中の細菌群集構造が多権化していることが伺えた。また、堆肥を施用した土壌ではいずれも無処理の土壌に比べて病原菌の胞子発芽が抑制れる傾向が見られた。以上の結果より、堆肥施用に伴う発病抑止機構の一つとして、多様化・活性化した土壌微生物の競合や拮抗など様々な機能の総合的作用によって土壌の静菌作用が強化され、病原菌の活動が抑制されることが考えられた。