著者
上田 多門 FARGHALY Ahmed Sabry Abdel Hamid
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

CFRP接着補強されたRCスラブの静的押抜きせん断耐力に関し,H20年度の成果をさらに発展させることにより,以下のことを明らかにした.(1)既往のFRP-コンクリート界面用の付着モデルを改良したモデルを導入した3次元FEM解析により,本研究での供試体に既往の研究の供試体を加えた14体の押抜きせん断破壊結果を,その破壊モード,変形量,耐荷力のいずれにおいても,適切な精度で推定できる.(2)接着されたCFRP補強材の引張力の存在により,CFRP接着補強されていない場合より,スラブコンクリートの圧縮領域に作用する圧縮力が増加する.この増加により,押抜きせん断破壊する際の,圧縮領域に作用するせん断力方向力が増加し,耐力が増加することになる.(3)押抜きせん断耐力は,圧縮領域での抵抗成分を考慮するだけで,概ね推定できる.(4)圧縮領域の応力分布推定モデルを提示し,第3方向の応力の影響が小さいことを考慮し,簡便な2次元のモール円に基づく破壊則を適用することにより,押抜きせん断耐力算定マクロモデルを提案した.(5)上記の耐力算定モデルによれば,押抜きせん断破壊は,圧縮領域での引張破壊により生じる.(6)本研究での供試体に既往の研究の供試体を加えた14体の試験結果を,耐力算定モデルは精度よく推定できる(平均値が1.00,変動係数が10.2%).この結果は,日米(JSCEとACl)のRCスラブ用の式を拡張して適用した場合より,精度が良い(JSCE式:平均値が1.59,変動係数が25.0%,ACl式:平均値1.38,変動係数が19.9%).上記に加え,CFRP接着補強されたRCスラブの疲労試験を実施し,押抜きせん断の疲労性状として次のことを明らかにした.(7)補強されていないRCスラブより,疲労寿命が長い可能性がある.