著者
Hatakeyama H.
出版者
Japan Meteorological Agency
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.302-316, 1958
被引用文献数
12

浅間火山の噴煙雲による大気電場のじよう乱を,軽井沢観測所構内(火口からの距離約 9km),前橋測候所構内(火口からの距離約 50km)及び前橋附近の数か所の臨時観測所で観測した.軽井沢観測所では電場のじよう乱は初め小さい正.後に大いき負である.しかし前橋附近ではじよう乱は負だけが多く,正のじよう乱を伴うものはごく少ない.<BR>噴煙雲の中では重力と空気の抵抗力との作用で,高さによる火山灰の粒の大いさのふるい分けが出来ている.小さい灰粒は正電荷をもって雲の上部にあり,大きい灰粒は負電荷をもって雲の下部にある.実際の火山灰を使って大小の灰粒同志が摩擦した時の帯電の実験をやって,大きい灰粒が負の電荷を得,小さい灰粒が正電荷を得ることを確かめた.<BR>火口に近い所では正負両方の電荷の影響が大気電場に現われるが,火口から遠い所では負電荷の影響だけしか現われないことを説明するために2つの仮説を提出した.<BR>この論文は最初" 気象集誌" 第21巻及び" 中央気象台附属気象技術官養成所研究報告" 第1巻に4篇の論文として発表したものであるが,それが邦文であったため外国人学者の注意をひくことが少なかったので,今回それを1つにまとめ,やや簡約にして印欄した次第である.