著者
Kashiwabara Shizuo Hamada Nobuo Yamamoto Masahiro
出版者
Japan Meteorological Agency
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.153-165, 1979

地球の自由振動については,1960年のチリ地震以来,数多くの観測および解析結果が報告されている。しかし観測の歴史はまだ浅く今後さらに観測資料の蓄積が大切であろう。<BR>現在気象庁で用いている測器で地球の自由振動のような長周期地震波の解析に利用できるものとしては,松代の石英管式ひずみ計・WWSS地震計・ASRO地震計および地震課で東海・南関東地域に展開中の埋込式ひずみ計がある。これらの器械は観測期間がまだ短かいこともあって,今日までに,自由振動の観測および解析はあまり行なわれていない。このため今回,松代の石英管式ひずみ計および伊良湖・三ケ日の埋込式ひずみ計の資料を用いて1977年8月にインドネシア・スンバワ島付近に発生した地震の解析を行なった。主な結果は次のとおりである。<BR>(1)石英管式ひずみ計から<SUB>0</SUB>S<SUB>n</SUB>について29個,<SUB>1</SUB>S<SUB>n</SUB>について10個,<SUB>2</SUB>S<SUB>n</SUB>について8個,<SUB>l</SUB>T<SUB>n</SUB>について23個のモード,また埋込式ひずみ計から<SUB>0</SUB>S<SUB>n</SUB>について29個のモードの地球の自由振動周期が得られた。これらの値と今日までに求められている観測値の平均値〔Anderson・Hart(1976)による〕との差はほとんどのモードで約0.5%以内である。<BR>(2)観測から得られた地球の自由振動周期を用いて表面波の位相速度を求めた。求めたレイリ波の位相速度は,Anderson・Hartの値から求めた速度よりやや大きくなる傾向が見られた。この相違は解析した地震の波の伝播径路中に位相速度の大きい海洋的地域および盾状地的地域(Canadian・Brazilian shields)の占める比率が大きいために生じたものであろう。<BR>(3)自由振動の解に含まれる関数d<SUP>2</SUP>P<SUB>n</SUB><SUP>m</SUP>(cosθ)/dθ<SUP>2</SUP>から求めた位数の零点列と地震記録の周期解析から求めたスペクトルピークの極小を与える位数の列を比較して自由振動のデグリーを決めた。松代の石英管式ひずみ計による伸び縮み振動に対応するスペクトルを用いた場合,デグリーは0または2となる。
著者
Suyehiro Shigeji
出版者
Japan Meteorological Agency
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.459-471, 1970
被引用文献数
2

1968年十勝沖地震の余震で浦河(北大地震観測所)の広帯域広ダイナミックレンジ地震計に記録されたものを調べたところ,P波S波について高周波の波が低周波の波に比べて遅れて到着するという一見分散のような現象が見られた.さらに前震や同地域における十勝沖地震以外のものを調べた結果,次の点が明らかとなった.<BR>(1)P,Sについて高周波の波が遅れる現象は比較的遠い余震に見られる(Fig.3).<BR>(2) この遅れの時間は震央距離が増すと共に大きくなる(Fig.4).<BR>(3) この現象を示す地震の深さは0から40km以上に及び,モホ面の下を含む.<BR>(4)ただし,この現象を起す地震群の中にありながら,深さ70kmの地震は高周波の遅れを示さなかった.<BR>(5) この疑似分散を示す地震の高周波部分は大きな減衰をも受けている.<BR>(6) この現象を示す地震は三陸沖の一部に限られる.東北地方の陸上,北海道内陸部,千島列島の地震は分散現象を示さないし,また高周波の減衰も僅かである(Fig.9).<BR>以上の観測事実から,東北地方の太平洋沖に異常地域があって,クラストとマントル最上部を占めている.この異常地域内部には分散子があって高周波に迂廻を起させるのであろう.またQタイプの吸収も正常地域より大きい.この地域が日本海溝の最北端にあたり,この附近の地震の発震機構が隣接の地域と異なっていることも興味深い.最近論ぜられているテクトニックスの問題と関連あるかもしれないが,そうとしても決して簡単な機構ではあり得ない.
著者
Tsuchiya Iwao
出版者
Japan Meteorological Agency
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.27-76, 1967
被引用文献数
2

偏西風の蛇行現象とその気候学的意義とを解析的に明らかにすることを考えた。蛇行の幅が増大した場合にはブロッキング現象の発生することが多いが,この現象は冬季の寒波(日本及び北米東部など)と初夏の梅雨と密接な関係を示すことが,事例解析及び統計的吟味から認められた。とくに従来の梅雨論で重視されたオホーツク海高気圧の存在は,活発な梅雨活動にとって必しも必要な条件とは言えないことが示された、すなわち,梅雨活動を高めるのは日本海から太平洋に抜ける上層寒冷低気圧であって,このような現象は典型的なブロッキング循環に見られる。温暖高気圧としてのオホーツク海藏気圧はこの場合に存在しやすいのであるが,その位置によってはオホーツク海域がむしろ低圧となる場合もある。<BR>なお,寒波の半球的な分布と洪積世大陸氷河の分布との類似性から,氷河時代に関する気候変動の機構を論ずることができるが,これに関連してミランコビッチ(1930)の変動論が再認識される必要のあることが認められた。
著者
Hatakeyama H.
出版者
Japan Meteorological Agency
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.302-316, 1958
被引用文献数
12

浅間火山の噴煙雲による大気電場のじよう乱を,軽井沢観測所構内(火口からの距離約 9km),前橋測候所構内(火口からの距離約 50km)及び前橋附近の数か所の臨時観測所で観測した.軽井沢観測所では電場のじよう乱は初め小さい正.後に大いき負である.しかし前橋附近ではじよう乱は負だけが多く,正のじよう乱を伴うものはごく少ない.<BR>噴煙雲の中では重力と空気の抵抗力との作用で,高さによる火山灰の粒の大いさのふるい分けが出来ている.小さい灰粒は正電荷をもって雲の上部にあり,大きい灰粒は負電荷をもって雲の下部にある.実際の火山灰を使って大小の灰粒同志が摩擦した時の帯電の実験をやって,大きい灰粒が負の電荷を得,小さい灰粒が正電荷を得ることを確かめた.<BR>火口に近い所では正負両方の電荷の影響が大気電場に現われるが,火口から遠い所では負電荷の影響だけしか現われないことを説明するために2つの仮説を提出した.<BR>この論文は最初" 気象集誌" 第21巻及び" 中央気象台附属気象技術官養成所研究報告" 第1巻に4篇の論文として発表したものであるが,それが邦文であったため外国人学者の注意をひくことが少なかったので,今回それを1つにまとめ,やや簡約にして印欄した次第である.