著者
四元 秀伸 Hidenobu Yotsumoto
出版者
創価大学大学院
雑誌
創価大学大学院紀要 = The bulletin of the Graduate School, Soka University (ISSN:03883035)
巻号頁・発行日
no.43, pp.15-32, 2022-03

少数に支配された法人では「利益を内部に留保して、法人税率よりも高い所得税の段階税率の適用を回避する」1ことが可能となる。そこで法第67 条の留保金課税制度では、少数に支配された一定の法人を対象に、その法人の一定額を超える留保額に課税することで不当な内部留保に対処している。 現在はその対象を一定規模の同族会社に限定し、留保控除額を超える部分にのみ課税される。しかし、本来、内部留保の性質は法人ごとに様々であり、その不当性を客観的基準により一律に判断することは難しい。つまり、同族会社のような少数に支配された法人だけが不当留保を行いうるのか、また、内部留保の不当性を留保控除額という一律の基準で判断できるのかどうか、という疑問が生じる。 本稿では、本制度の目的及び各基準の設定根拠を改めて整理し、現行基準と照らし合わせることでその妥当性に対する一考察を行った。