著者
西澤 秀行 Hideyuki NISHIZAWA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.21, pp.53-64, 2021-12

南米ペルー中央高地南部のアヤクチョ谷では、中期ホライズン期の始まり(紀元550-600年頃)に古代アンデス世界初となる国家社会「ワリ」が誕生した。ところが、それより早い前期中間期の後半にもなると、アヤクチョ地方の地元社会「ワルパ」が南海岸ナスカ社会と接触や交流を始めるようになった。このことは、「クルス・パタ」様式土器とよばれるワルパ文化の土器からうかがい知ることができる。本稿は、ワリ遺跡で近年実施された発掘調査により出土したクルス・パタ様式土器に焦点を当て、そこで分類された3つのタイプを記述紹介するとともに、それら異なるタイプの時間的な変遷について論じた。さらに、のちの時代に登場するワリ文化の土器様式とクルス・パタ様式との関係についても若干の考察をくわえた。