著者
Hiratsuka Naohide Shimabukuro Shun-ichi 平塚 直秀 島袋 俊一
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = Science bulletin of the Faculty of Agriculture, University of the Ryukyus
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-56, 1954-04

本研究に先鞭をつけたのは平塚直治博士(著者の1人平塚の実父)である。同氏は1899年9月,沖縄中学校(後の沖縄第1中学校)に博物担当教師として来任,翌年4月病を得て退職帰郷するまで,在職わづかに7ケ月間ではあつたが,その間菌学者である同氏は沖縄島所産の銹菌類にとくに興味を持ち,公務の余暇にこれらの採集調査を行つた。これらの採集品のうち首里城瑞泉門外で発見採集されたチシャノキの葉上の1銹菌は1900年,同氏著の"Notes on some Melampsorae of Japan. 3.Japanese species of Phacopsora." (植物学雑誌,14,p.91) と云う表題の論文中で,Phacopsora Ehretiae Hiratsuka(新種)として公表された。この論文は琉球諸島所産銹菌類に関する研究発表の最初のものである。爾来1940年にいたる40年間に,三宅勉氏,伊藤誠哉博士およびDr.P.& H. Sydow,著者の1人平塚らによつて公表された同諸島産の銹菌類は,Phakopsora属1種,Coleosporium属1種,Poliotelium属1種,Puccinia属5種およびUromyces属1種,計5属9種であり,これらのうちPuccinia Ophiopogonis Cummins(Uredo Ophiopogonis Syd.)をのぞけば他の8種はすべて平塚直治博士ならびに宮城鉄夫氏の採集に係るものである。1940年1月上旬,著者の1人平塚は銹菌類研究のため沖縄島を訪れ約3週間にわたり平良芳久君を助手として同島各地において銹菌類の採集調査を行つたが,さらに平塚の離島後は同年4月下旬まで平良君によつて採集がつづけられ多くの興味ある銹菌類を得た。これらの採集品を主な研究資料として平塚は同年,"Materials for a rustflora of Riukiu Islands, 1 & 2. "(植物学雑誌,54,p.157~166,373~377)と題して,奄美群島なども含む琉球諸島産銹菌類19属76種を公表した。ついで,翌1941年,さらに平塚は"Uredinales of Okinawa Island" (札幌博物学会報,17,p.16~39)という表題で,沖縄本島産銹菌類20属96種(新種3種を含む)をあげ,同島の銹菌類フロラを論じた。1953年4月下旬,平塚は本学の招聘教授として来島,2ヶ月講義,実験指導のかたわら著者の1人島袋とともに同島各地の銹菌類の採集調査を行った。平塚は同年6月下旬帰国したが,その後は島袋によって沖縄本島のみならず,久米島,宮古島などにおける採取調査がつづけられた。奄美大島産の銹菌類については保 虎太郎氏の採集品約20個にもとづいて公表されたのみであったが,昨年末,新納義馬君によって多数の同島産銹菌類が採集され著者らに提供された。本報文は,琉球諸島,即ち,奄美群島,沖縄群島,宮古群島,および八重山群島において採集された銹菌類の種類を検討せる結果を発表したもので,著者らが近い将来公表するべく企図している「琉球諸島銹菌フロラに関する研究」の前篇とも見做されるべきものである。本研究の概要はつぎの如くである。(1) 琉球諸島所産の銹菌類として,層生銹菌科(Melampsoraceae)に属する9属,32種,柄生銹菌科(Pucciniaceae)に属する15属,109種ならびに不完全銹菌類(Uredinales Imperfecti)に属する2属18種,計26属,159種を列挙した。(2) 新種として命名記載した種類は, HamasPora okinawensis Hiratsuka,f.(3.ホザキイチゴに寄生),Puccinia Caricis-Boottianae Hiratsuka,f.(0,1.ツワブキ;2,3.コゴメスゲに寄生)および Uredo thermopsidicola Hiratsuka,f.(2.クソエンドウに寄生)の3種であり,新組合せの学名を与えたものは,Didymop-sorella lemanesis (Doidge) Hiratsuka,f.の1種である。(3) 日本列島においてはじめて発見採集された種類は,Crossopsora Antidesmaedioicae(Syd,)Arthur et Cummins(2,(3).ヤマヒハツに寄生), Uromyces Baeumlerianus Bubák(2,3.コゴメハギに寄生)および Uredo psychotricola Hennings(リュウキュウアオキに寄生)の3種である。(4)琉球諸島において今回はじめて産することの明かとなった種類は,前掲の Hamaspora okinawensis, Uredo thermopsidicola, Crossopsora Antidesmaedioicae, Uromyces Baeumlerianus および Uredo psychotricolaの5種を除けば,Uredinopsis属1種,Milesina属1種,Pucciniastrum属2種,Crossopsora属1種,Phakopsora属2種,Colepucciniella属1種,Coleospoium属2種,Kuchneola属1種, Maravalia属1種. Gymnosporangium 属1種,Xenostele属1種,Uromyces属7種,Puccinia属19種,Aecidium属7種およびUredo属2種で,総計15属49種である。
著者
Hiratsuka Naohide
出版者
札幌博物學會
雑誌
札幌博物学会会報
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.134-138, 1934-06-20