著者
平山 琢二 田崎 駿平 藤原 望 眞榮田 知美 大泰司 紀之 Hirayama Takuji Tasaki Shumpei Fujiwara Nozomi Maeda Tomomi Ohtaishi Noriyuki
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.59, pp.25-27, 2012-12

The dugong trenches in the coast of Iriomote Island were investigated. The luxuriance of seagrasses in the western coast of Iriomote Island was higher than seagrasses in Okinawa Island. And many kinds of species of the seagrasses were observated (two family, six genus, eight species). The field investigated in this time was more large area and very well. Therefore, the side of diversity of living thing, the western coast of Iriomote Island was most important area. And, this coast has profusion of the Food of dougong dugon. But in this investigation, we were not able to check dugong trench in the coast of Iriomote Island. Therefore, it was guessed that a possibility that, as for us, the dugong inhabits the Iriomote island was low.西表島周辺におけるジュゴンの定着の可能性について調査する目的で、ジュゴンによる食痕調査およびジュゴンに関する伝聞や目撃情報などの聞き取り調査を行った。食痕調査では4地域を行った。また、聞き取り調査では石垣島およひ西表島で計41名を対象に行った。ジュゴンの食痕調査では、いずれの地域においてもジュゴンによる食痕は確認できなかった。また、ジュゴンの目撃に関する情報は、石垣島およひ西表島ともに全くなかった。伝聞に関しては30件の情報を得た。このようなことから、今回のジュゴンの食痕調査および聞き取り調査から、現在は西表島周辺にジュゴンは定着していないと思われた。しかし、かつてジュゴンが棲息していた地域における海草藻場の広がりは極めて良好であり、南西諸島海洋の生物多様性の面からも非常に重要な地域である。西表島西岸は、定期船の往来も少なく、良好な藻場を有していることから、西表島におけるジュゴン定着の可能性は極めて高いものと推察された。
著者
仲間 勇栄
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.50, pp.85-92, 2003-12

本論文では、沖縄の伝統的食文化の一つである木灰ソバの意義について、その歴史と製造の面から考察した。現在、木灰ソバは中国甘粛省蘭州、タイのチェンマイ、沖縄の三箇所で確認されている。琉球への伝来は、14世紀末の中国からの「久米三十六姓」の渡来以降説と、中国からの冊封使による来琉(1372)以降の説が有力と考えられる。この木灰ソバが一般庶民のポピュラーな食べ物となるのは、明治以降のことではないかとみられる。灰汁に使われる樹種は、戦前ではアカギ、イヌマキ、ガジュマル、モクマオウ、ゲッキツ、現在では、主にガジュマル、イジュ、イタジイ、モクマオウなどである。木灰ソバは天然の樹木の灰から灰汁を採り、それを小麦粉に練り込んでつくる。普通の沖縄ソバでは人工のかん水が使われる。天然の灰汁には、カリウムやナトリウムなどのミネラル成分の他に、微量成分が数多く含まれている。これらの無機成分は、人間の健康維持にとっても不可欠のものである。この天然の灰汁でソバを作るとき、ph値12-13、ボーメ度2-3程度が良好とされる。この天然の灰汁で作る木灰ソバは、味覚の多様性を養う健康食品として、後世に伝えていくべき価値ある麺食文化の一つである。
著者
米盛 重友
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.22, pp.p797-811, 1975-12

西表島の熱帯農研を中心とした園芸植物の調査を行なった結果, 61科119種記載された。草花用として11科24種, 盆栽用として20科38種, 観葉植物用として25科44種, 花木おたび庭園木用として33科46種, 果樹用として4科6種である。その中で特に注目されるものとして, 1.草花用 コウトウシラン, ナリヤラン, イリオモテラン, ノボタン, ヒメノボタン, フジボグサ 2.盆栽用 ヒラミカンコノキ, ミズガンピ, シマヤマヒハツ, ハリツルマサキ, ヤエヤマコクタン, タイワンウオクサギ, ヒレザンショウ 3.観葉植物用 リュウキュウヒモラン, コブラン, ヤブレガサウラボシ, ヘゴ, ミミモチシダ, シマタニワタリ, コミノクロツグ, ヤエヤマヤシ, ハブカズラ, カゴメラン 4.花木および庭園木用 ヒメサザンカ, サキシマツツジ, セイシカ, サガリバナ, サンダンカ, モッコク, モンパノキ, クロガネモチ 5.果樹用 フサラ, シマヤマヒハツ
著者
石垣 長健 新里 孝和 新本 光孝 呉 立潮 Ishigaki Choken Shinzato Takakazu Aramoto Mitunori Wu Lichao
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.54, pp.23-27, 2007-12
被引用文献数
1

近年、イノシシ肉はグルメブーム、観光ブーム、村おこしブームなどにより商品化が高まりつつある。西表島におけるリュウキュウイノシシと餌資源である森林植物との関係、解体および利用方法を明らかにし、将来的に持続可能な狩猟を行い、食用資源としての需要を図ることを目的とした。調査の結果、西表島のリュウキュウイノシシはドングリ(イタジイ、オキナワウラジロガシ)などの堅果類を好み、その他主に植物性のものを採食し、餌資源植物には30種あることがわかった。イノシシ肉は、採食する餌の種類、季節により肉質に違いがみられ、旨味は脂肪の量に関係し、特有の臭さは血にかかわりがあると考えられた。
著者
上里 健次 Schinini Aurelio Nunez R. Eduardo Uesato Kenji
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.59, pp.29-34, 2012-12

アルゼンチン北東部のハチドリの生息地に2ヵ年滞在して、ハチドリの行動生態に関する現地調査と写真撮影を行った。とりわけ魅力的で空飛ぶ宝石とも呼ばれるハチドリの飛翔姿態については、著者のみならず、何人にも認められる自然の宝物のひとつである。着任後しばらくはハチドリの飛翔を目にしても、写真撮影のチャンスは治安の悪化情勢もあって、全く考える余地はなかった。その中で専門分野の熱帯花木の開花状況を調査中に、合わせてハチドリの飛翔習性の把握にも努めた。生息する数種のハチドリの一種、コモンハチドリ一種が留鳥として、冬季間も飛来活動を続けることの知見が得られたことも幸運であった。飛翔習性と冬季に開花する植物との関連性の理解、花蜜でない昆虫捕食の活動についても目視できた。これらの現地調査の結果、各植物の花とホバリングの組合わせ、昆虫の空中での捕食、巣と卵の確認などそれぞれに貴重な記録が得られた。留鳥か渡りかの周年の動き、生息するハチドリの種の違いなどにも知見が得られた。ハチドリは鳥類の中では最小最軽量、胸筋が発達して飛翔能力に優れていることから、空中飛翔時に停止後退が可能で、そのことによる飛翔姿態の優雅さが注目される特別の野鳥である。まさしく生きた宝石で、最も魅惑的な野鳥として評価されることは当然である。ハチドリのホバリング撮影は難事なだけに、少なくとも中南米旅行でそのチャンスがあれば留意を望みたい。
著者
新里 孝和 諸見里 秀宰
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.19, pp.503-557, 1972-12

In the present paper history, location (northern part of Okinawa Is., Latitude N. 26°45′and Longitude E. 128°05′), area (about 679ha.), topography and climate ofYona experimental forest of University of the Ryukyusare given in brief description. As the result of a survey on the basis of six quadrats and six belt transects, it was recognized that forest vegetation of the experimental forest is mostly consists of Castanopsis sieboldii association, and the most frequent co-dominant species is Distylium racemosum The number of family, genus and species (among the number 4 subspecies, 21 varieties and 4 forms are included) of the trees and shrubs indigenous to the experimental forest are 58,121 and 191 respectively.
著者
Hiratsuka Naohide Shimabukuro Shun-ichi 平塚 直秀 島袋 俊一
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = Science bulletin of the Faculty of Agriculture, University of the Ryukyus
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-56, 1954-04

本研究に先鞭をつけたのは平塚直治博士(著者の1人平塚の実父)である。同氏は1899年9月,沖縄中学校(後の沖縄第1中学校)に博物担当教師として来任,翌年4月病を得て退職帰郷するまで,在職わづかに7ケ月間ではあつたが,その間菌学者である同氏は沖縄島所産の銹菌類にとくに興味を持ち,公務の余暇にこれらの採集調査を行つた。これらの採集品のうち首里城瑞泉門外で発見採集されたチシャノキの葉上の1銹菌は1900年,同氏著の"Notes on some Melampsorae of Japan. 3.Japanese species of Phacopsora." (植物学雑誌,14,p.91) と云う表題の論文中で,Phacopsora Ehretiae Hiratsuka(新種)として公表された。この論文は琉球諸島所産銹菌類に関する研究発表の最初のものである。爾来1940年にいたる40年間に,三宅勉氏,伊藤誠哉博士およびDr.P.& H. Sydow,著者の1人平塚らによつて公表された同諸島産の銹菌類は,Phakopsora属1種,Coleosporium属1種,Poliotelium属1種,Puccinia属5種およびUromyces属1種,計5属9種であり,これらのうちPuccinia Ophiopogonis Cummins(Uredo Ophiopogonis Syd.)をのぞけば他の8種はすべて平塚直治博士ならびに宮城鉄夫氏の採集に係るものである。1940年1月上旬,著者の1人平塚は銹菌類研究のため沖縄島を訪れ約3週間にわたり平良芳久君を助手として同島各地において銹菌類の採集調査を行つたが,さらに平塚の離島後は同年4月下旬まで平良君によつて採集がつづけられ多くの興味ある銹菌類を得た。これらの採集品を主な研究資料として平塚は同年,"Materials for a rustflora of Riukiu Islands, 1 & 2. "(植物学雑誌,54,p.157~166,373~377)と題して,奄美群島なども含む琉球諸島産銹菌類19属76種を公表した。ついで,翌1941年,さらに平塚は"Uredinales of Okinawa Island" (札幌博物学会報,17,p.16~39)という表題で,沖縄本島産銹菌類20属96種(新種3種を含む)をあげ,同島の銹菌類フロラを論じた。1953年4月下旬,平塚は本学の招聘教授として来島,2ヶ月講義,実験指導のかたわら著者の1人島袋とともに同島各地の銹菌類の採集調査を行った。平塚は同年6月下旬帰国したが,その後は島袋によって沖縄本島のみならず,久米島,宮古島などにおける採取調査がつづけられた。奄美大島産の銹菌類については保 虎太郎氏の採集品約20個にもとづいて公表されたのみであったが,昨年末,新納義馬君によって多数の同島産銹菌類が採集され著者らに提供された。本報文は,琉球諸島,即ち,奄美群島,沖縄群島,宮古群島,および八重山群島において採集された銹菌類の種類を検討せる結果を発表したもので,著者らが近い将来公表するべく企図している「琉球諸島銹菌フロラに関する研究」の前篇とも見做されるべきものである。本研究の概要はつぎの如くである。(1) 琉球諸島所産の銹菌類として,層生銹菌科(Melampsoraceae)に属する9属,32種,柄生銹菌科(Pucciniaceae)に属する15属,109種ならびに不完全銹菌類(Uredinales Imperfecti)に属する2属18種,計26属,159種を列挙した。(2) 新種として命名記載した種類は, HamasPora okinawensis Hiratsuka,f.(3.ホザキイチゴに寄生),Puccinia Caricis-Boottianae Hiratsuka,f.(0,1.ツワブキ;2,3.コゴメスゲに寄生)および Uredo thermopsidicola Hiratsuka,f.(2.クソエンドウに寄生)の3種であり,新組合せの学名を与えたものは,Didymop-sorella lemanesis (Doidge) Hiratsuka,f.の1種である。(3) 日本列島においてはじめて発見採集された種類は,Crossopsora Antidesmaedioicae(Syd,)Arthur et Cummins(2,(3).ヤマヒハツに寄生), Uromyces Baeumlerianus Bubák(2,3.コゴメハギに寄生)および Uredo psychotricola Hennings(リュウキュウアオキに寄生)の3種である。(4)琉球諸島において今回はじめて産することの明かとなった種類は,前掲の Hamaspora okinawensis, Uredo thermopsidicola, Crossopsora Antidesmaedioicae, Uromyces Baeumlerianus および Uredo psychotricolaの5種を除けば,Uredinopsis属1種,Milesina属1種,Pucciniastrum属2種,Crossopsora属1種,Phakopsora属2種,Colepucciniella属1種,Coleospoium属2種,Kuchneola属1種, Maravalia属1種. Gymnosporangium 属1種,Xenostele属1種,Uromyces属7種,Puccinia属19種,Aecidium属7種およびUredo属2種で,総計15属49種である。
著者
新本 光孝 砂川 季昭
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.22, pp.p771-787, 1975-12

1.本研究は西表島における観光開発の基本的な方法を明らかにするためにおこなったものである。2.今回は, 西表島の概況, レクリェーション利用者の分析, 森林保護の状況などについて述べた。この研究調査をおこなうにあたり, 貴重な文献のご送付やご助言をいただいた日本林業技術協会指導部長島俊夫氏, 熊本営林局計画課長有村洋氏, 沖縄営林署長羽賀正雄氏ならびに調査にご協力をいただいた祖納担当区宮内泰人氏, 上原担当区金城誠俊氏, 琉球大学熱帯農研新城健氏, 神里良和氏, 新本肇氏, 祖納部落の那根団氏に対し深謝の意を表する次第である。
著者
城間 理夫
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.20, pp.169-190, 1973-12

この報告は沖縄におけるパインアップルの蒸発散量について熱収支法による1つの測定実験結果をまとめたものである。測定は琉球大学構内においてライシメーターに栽培してあるスムースカイエン種の株について1972年の夏に約1か月間にわたって行なった。各株は植付後15か月ないし16か月経過していて葉面積指数は4.1∿4.3であり結実期に入ったものであったが, これらの株に対するかん水は常にじゅうぶんに行なわれていた。全測定期間のうちで降雨や強風などがなくて測定条件の比較的によかった9日間の測定結果をまとめると次のとおりである。1.夏期, 結実期に入ったパインアップルの蒸発散量はくもりの日に約1.3mm/day, 晴天の日に約2.7mm/dayで, 全平均は2.1mm/dayであった。2.パインアップルの植被上における昼間の各熱収支項の平均の大きさは, 純放射100に対して潜熱伝達量40,顕熱伝達量56,地中伝熱量4のオーダーであった。3.パインアップルの植被上におけるアルベドは日出, 日入のころを除き平均0.15で他の作物に比べて小さい方であった。4.熱収支法によるとパインアップルの夜間における蒸発散量はほとんどゼロになる。
著者
四方 治五郎 江川 義和 宮良 生金 知念 功
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p185-193, 1978-12

オニヒトデ胃部に存在するコラーゲナーゼ, 酸性プロテアーゼはいずれもその至適pHは2.0附近にある。両酵素を硫酸アンモニューム沈澱, セファデックスG-150カラムクロマトグラフィに依り分離を試みたが成功しなかった。又CM-セルロースに依り両酵素活性は吸着されず, DEAE-セルロースに依っては両酵素とも若干吸着され, 吸着の程度においてコラーゲナーゼの方が強く(殊にpH5.0において)吸着された。EDTAを外液とする透析に依る両酵素活性の失活の程度, Ca^<++>イオン, Zn^<++>イオンに依るその賦活において両酵素において著しい差は認められなかった。然しコラーゲナーゼの方がその金属イオン要求度において強かった。以上よりして両酵素が同一タンパクではないにしてもその性質が著しく似ていることが明かとなった。ペプシンに特異的阻害剤によりオニヒトデ胃部酸性プロテアーゼが阻害されない所から, 本プロテアーゼはペプシン様酵素ではなく, この酸性プロテアーゼ標品に含まれるコラーゲナーゼ活性は酸性プロテアーゼがペプシン様酵素であるが故のものでないことを明かにした。
著者
平山 琢二 田崎 駿平 藤原 望 眞榮田 知美 大泰司 紀之
出版者
琉球大学農学部
巻号頁・発行日
no.59, pp.25-27, 2012 (Released:2013-12-26)

西表島周辺におけるジュゴンの定着の可能性について調査する目的で、ジュゴンによる食痕調査およびジュゴンに関する伝聞や目撃情報などの聞き取り調査を行った。食痕調査では4地域を行った。また、聞き取り調査では石垣島および西表島で計41名を対象に行った。ジュゴンの食痕調査では、いずれの地域においてもジュゴンによる食痕は確認できなかった。また、ジュゴンの目撃に関する情報は、石垣島および西表島ともに全くなかった。伝聞に関しては30件の情報を得た。このようなことから、今回のジュゴンの食痕調査および聞き取り調査から、現在は西表島周辺にジュゴンは定着していないと思われた。しかし、かつてジュゴンが棲息していた地域における海草藻場の広がりは極めて良好であり、南西諸島海洋の生物多様性の面からも非常に重要な地域である。西表島西岸は、定期船の往来も少なく、良好な藻場を有していることから、西表島におけるジュゴン定着の可能性は極めて高いものと推察された。
著者
日越 博信 宮城 寿満子 諸見里 淳子 平川 守彦
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.45, pp.35-41, 1998-12

沖縄県内のヤギ飼養農家22戸, 73頭の糞便由来大腸菌合計822株について, 7薬剤に対する感受性試験を, また耐性菌については伝達性Rプラスミドの検索も行った。これらの成績を給与飼料別(野草のみと野草+穀類), 地域別(北部と南部)に比較した。7薬剤のいずれかに耐性の大腸菌は, 全体では147株(17.9%)であった。給与飼料別の検出率では野草のみが17.2%, 野草+穀類が18.7%でほぼ同率であった。しかし, 野草のみでは北部31.8%, 南部5.7%で, 前者が高率であったのに対し, 野草+穀類では北部17.8%, 南部19.2%でほぼ同じであった。薬剤別ではCTC耐性が11.3%で最高, 以下SA, ABPC, SM, KM, CP耐性の順であり, NA耐性は検出されなかった。野草のみでは, CTC耐性が両地域とも1位の検出率を示したが, 野草+穀類では, 北部でCTC耐性が1位を, 南部でABPC耐性とSA耐性が同率1位を示すなど, 若干異なった。耐性型の種類は, 全体では5剤型を除く単剤型から6剤型まで17種類認められた。野草のみでは北部6種類, 南部8種類, 野草+穀類ではそれぞれ3種類と6種類であり, いずれも南部が多かった。また6剤型は南部の野草+穀類でのみ検出された。野草+穀類では2剤以上の薬剤に耐性の多剤耐性型が大多数を占め, 特に南部の全株が多剤耐性型であったが, 野草のみでは50&acd;56%が逆に単剤型であった。耐性菌147株のうち, 17株(11.6%)が伝達性Rプラスミドを保有し, 野草のみ9株(北部8株, 南部1株), 野草+穀類8株(南部のみ)であった。これら菌株の伝達耐性型は, 野草のみの9株がCTC単剤伝達性, 野草+穀類では5株がSM単剤伝達性, 3株がSM-SA2剤伝達性であった。
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = The science bulletin of the College of Agriculture, University of the Ryukyus (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.56, pp.49-54, 2009-12

沖縄におけるアリの生物的害虫防除への利用に向けた第一歩として、沖縄島の7ヶ所の圃場(そのうち6つはハウス)におけるアリ相と個体数の季節変動を約1年間調べた。ピットフォールトラップ法を用いて圃場の中とすぐ外の屋外環境で調査を行った。栽培作物はラン、ドラゴンフルーツ、ナス、ゴーヤ、サトウキビ、ピーマンであった。屋外、ハウスに限らずアリ類は気温が低い1月から3月は採取個体数・種数ともに少なく、気温が高い5月〜10月にかけて採取個体数・種数ともに多かった。栽培作物によるアリ相に大きな違いはみられず、オオシワアリ、タロヒメアリ、ブギオオズアリ、ミナミオオズアリの遍在性が高く個体数も多かった。沖縄島の圃場でアリを害虫防除資材として利用する場合、これらの種が高温期に利用できる可能性があると考えられる。その一方で優占種の多くは外来の放浪種であり、利用時にはその侵略性のリスクの検討も必要である。
著者
宮城 調勝
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p281-286, 1976-12

国頭マージから選別したシルト試料と, 前の報告による粘土試料についての膨潤圧, 膨潤量, 収縮量を, 土の表面積を使って比較検討してきた。この中で, 比表面積の異なるシルト, 粘土試料の膨潤圧が単位表面積当りに換算した場合, ほぼ等しい値を示したことは興味深い。また膨潤収縮時における平均空げき半径は, 全く自由な湿潤状態における比表面積&acd;水膜厚さの関係とは逆に, 土層中においては細粒子ほど大きな値を示す結果を得た。このようなことから, 土粒子表面の活性を論ずる上で, 土の比表面積の果す役割が大きいと思われる。In this paper, the distance of soil particles in swelling and shrinking samples, has been stadied. The distance of soil particles is obtained by dividing the air-void in soil by the surface area of soil particles. The results obtained from these experiments are as follows : I. Comparing swelling pressure of silt and clay, it was found that silt has smaller values than clay in it's unit weight, but in unit surface area of particles, they have same values of swelling pressure. 2. In the swelling and shrinking samples, silt has smaller values in the average distance of soil particles than clay.
著者
米盛 重保
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.31, pp.p201-205, 1984-12
被引用文献数
1

(1)pHが8.15&acd;9.2の強アルカリ性の沖縄の海砂を培地に使用して過去4年に亘りトマトの砂栽培を試みた。(2)肥料はOKF-1の500倍液(PH6&acd;7,EC2.1)を5l/m^2で, 週2&acd;3回施用した。(3)栽培ベットは第1図の通り舟底型の隔離ベットで底部に砂利を敷きその上に15&acd;20cm厚の砂を敷き詰め栽培床とした。(4)排水が良くなり湿害は皆無でアルカリ障害や微量要素欠乏症の発生が全く認められなかった。(5)茎・葉の生育や果実の着果肥大は順調に行なわれ各果房の平均着果数は4.6個, 平均果重は237gで尻ぐされ病等の発生は全く認められなかった。(6)強アルカリ性の海砂でのトマト栽培が可能となり, 土耕に比較して湿害, 塩類集積, 連作障害が解消され, また養液栽培に比較して培養液調節, 培養液温度調節, 酸素補給が不要である。したがって本栽培法は土耕栽培法および養液栽培法の問題点を補う新しい栽培法と言えよう。(7)本栽培は土壌が不要であるため劣悪土壌地帯や市街地のベランダや屋上での栽培, 施設園芸の新しい培地として有望である。
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二 Xu Xiaoniu Enoki Tsutomu Tokashiki Yoshihiro Hirata Eiji
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = The Science Bulletin of the Faculty of Agriculture. University of the Ryukyus (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.45, pp.195-208, 1998-12-01

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。Litter fall and the nutrient returns in a forest were studied. The results obtained from five plots in natural evergreen broadleaved forests at Northern Okinawa Island in the period May 3,1996 to May 1,1998. Annual rates of total litter fall ranged from 7328 to 12700kg ha^<-1> a^<-1> in the first year, and from 5577 to 8073kg ha^<-1> a^<-1> in the second year, with great variation between the two years being related to the effects of the stronger typhoon No. 12 from August 11 to 12,1996. And the foliage litter fall contributed the greatest amount, about 63.7% averagely ranging from 54.6 to 78.8% of the total litter mass, and peaked in March and August, respectively. The results from this investigation indicated that the annual mean litter fall rate was positively correlated with stem volumes, mean D.B.H. and mean height of the stand, however, was negatively correlated with the stand density and neither related to the stand basal area. The annual amounts of nutrient returned by litter fall in the sampling stands were, N from 61.3 to 128.2kg ha^<-1> a^<-1>, P from 2.8 to 6.0kg ha^<-1> a^<-1>, K from 20.8 to 44.5kg ha^<-1> a^<-1>, Ca from 40.0 to 117.9kg ha^<-1> a^<-1>, Mg from 13.3 to 28.3kg ha^<-1> a^<-1>, S from 7.0 to 14.6kg ha^<-1> a^<-1>, Na from 8.4 to 17.2kg ha^<-1> a^<-1>, Al from 8.6 to 16.6kg ha^<-1> a^<-1>, Fe from 0.6 to 1.4kg ha^<-1> a^<-1>, and Mn from 2.6 to 5.4kg ha^<-1> a^<-1>, respectively. However, the annual nutrient returns for microelements such as Cu, Zn, Mo, Co and B were very little. Within the annual cycle, monthly nutrient fall was the most in August and the least in January, and the former was 12&acd;31 times more than the latter. Spring and summer (from March to August) was most important, accounting for over 70% of the nutrients.