著者
Ian L. Brown Masaru Yotsuzuka Anne Birkett Anders Henriksson
出版者
Japanese Association for Dietary Fiber Research
雑誌
日本食物繊維学会誌 (ISSN:13495437)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2006-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
60

レジスタントスターチ(RS)は多彩な生理学的機能を発揮するが,その効果の多くはRSの大腸内菌叢による醗酵に由来する。RSは特定の腸内益性菌の増殖を促進するとともに多くの病原性細菌を抑制することによりプレバイオティクスとして機能することが観察されている。RSは腸内常在菌叢を活性化するので細菌性の下痢や炎症性大腸炎などの治癒を助ける。プロバイオティクスは宿主の健康を改善すると考えられてきたが,その有効性に関する検証結果は必ずしも一貫性のあるものではなかった。このような中で,プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた『シンバイオティクス』がプロバイオティクスの有益な効果の再現性を改善するものとして提案されている。また,RSは特定のプロバイオティクスを狙った標的シンバイオティクス開発の可能性を提供する。この場合,RSは上部消化管内通過に際してプロバイオティクスを保護するとともに大腸内で好ましい特定の生理機能を誘発するなど,多面的な機能を発揮する。Bifidobacteria lactisとそれが好んで醗酵するハイアミロースコーン起源のRSとを配合した『シンバイオティクス』は,大・直腸がんのモデルラットでアポトーシス係数を顕著に高めることが示されている。RSは,その多様性のため,目的に応じて適切なプロバイオティクスを用いて標的特異的な『シンバイオティクス』を開発し,大腸の健康の改善や疾患の治療に寄与する機会を提供する。