著者
今井 貴代子 Imai Kiyoko イマイ キヨコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.77-88, 2007-03

1970年代以降日本に定住するようになった新来外国人の数は増加の一途をたどっている。彼らに対する日本語教育支援は推進されつつあるが、学習の機会が全ての人に十分に提供されているとは言えない。これまでのニーズ調査や生活実態調査では、学習の場に参加していない外国人の多さが指摘されるとともに、学習要糞の高さが明らかにされてきた。しかし、このような調査は量的な調査に限られることが多く、学習状況や学習ニーズが具体的な生活背景から検討されることは少ない。本稿では、公的な学習の場に参加していない中国人女性2人へのインタビューをもとに、具体的な生活状況から学習ニーズを検討する。インタビューから以下のことが示唆された。1)ことばの面で最も不自由しているのは職場でのやりとりである。しかし、職場では相互交流によるインフォーマルな日本語学習が行われている。2)学習状況や学習ニーズは、移住という社会プロセスの中で変化する。新たなコミュニティへ参加する段階において最もニーズが顕在化する。今後は、こうしたインフォーマルな学習に着目すると同時に、移民プロセスという観点から学習ニーズをとらえることが求められる。