著者
Inouye W.
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.177-192, 1959
被引用文献数
3

日本の地震観測の資料から深発地震の規模を求めるという試みは,既に和達,本多,広野,岩井,勝又によってなされている。<BR>然し,地球上層の地震波の速度分布,波動の減衰係数の分布などが十分分つていないばかりでなく,波動減衰の機構も明確でない。また,地震動に対する地盤補正も,深発地震では異常震域を伴うので当然浅発地震の場合とは異なる筈である。<BR>なお,発震機構によつて実体波の振幅の方位差も考えられるので,蛇足のようであるが,この問題を取扱つてみた。<BR>主な結果は次のようなものである。<BR>(1)NORMAN RICKERの連波説によつて計算したlog<I>A</I>/<I>T</I>-Δ 曲線は観測値と比較的よく一致する。<BR>(2) M≦7の場合は<BR>0.63M=log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>+α(<I>H</I>)<BR>によつて,<BR>M>7の場合は<BR>{0.63+0.08(log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>+α(<I>H</I>)-4.4)}<I>M</I>=log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>+α(<I>H</I>)によつて深発地震の<I>M</I>が求められる、但し,α(<I>H</I>)は深さによつて異なる常数であつて,α(<I>H</I>)=2.5log<I>T</I><SUB>0</SUB>-2.8によつて与えられる。此処に,<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>は震央における<I>A</I>/<I>T</I>の値であり,<I>T</I><SUB>0</SUB>は震央における<I>S</I>相の走時である。<BR>(3)深発地震に対する地盤補正は浅発地震に対するものと著しく異なつている。<BR>(4)観測されるlog<I>A</I>/<I>T</I>は震源における方位に関係があり,断層面に直角の方向に大きくなつているようである。<BR>(5)<I>M</I>を求めるときの基本となる<BR>log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>∞0.63<I>M</I>という関係は,坂井の半無限弾性体の内部に震源のある場合の波動理論によつて説明される。<BR>然し,最も大事な地球上層の地震波の速度分布および波動の減衰係数の分布は将来の問題として残されている。