著者
三宅 泰雄 金沢 照子 猿橋 勝子 葛城 幸雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.89-98, 1976-10-27 (Released:2012-12-11)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

(1)本州東北地方の日本海側における放射性降下物の冬期にあらわれる降下率の極大について,秋田の観測値を基礎にして班究をおこなった。秋田において西ないし北西風が吹き,大気の鉛直不安定度が高い場合,降水の比放射能値は他の気象条件の場合にくらべ5ないし8倍になることがわかった。従って日本海側にみられる放射性降下物量の冬の極大は,この地方に冬の降水量が多く,北西季節風が卓越し,しかも,寒冷気団が日本海上を通過する際に下層大気があたためられ,その鉛直不安定度が増撫することなどによって説明できる。(2)大阪における放射性物質降下量が他の地域にくらべて少ない原因について調べた。90Sr降下量の比は,東京と大阪が1.4である。大阪と東京の年間降水量はほぼ等しいので,両都市の90Sr降下量の差は他の気象要因によるものである、大阪では地形の影響をうけて,全降水量の72%が北ないし東北東の風に伴なうことが明らかになった。放射性ちりを運ぶ西ないし北西の風が,大阪では他の地域にくらべて少ないことが放射性物質降下量を小さくする主な原因であることが分った。
著者
勝間田 明男
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.57-71, 1993 (Released:2006-10-20)
参考文献数
19

伊豆半島の伊東市川奈崎沖では、1978年から群発地震活動が年1~2回程度の回数で活発化、沈静化を繰り返してきた。伊豆半島北東部を中心に1978年秋から異常隆起が始まり、ほぼ一様な隆起を継続してきた。1989年にも6月30日に群発地震活動が始まった。このときの地震活動は、それ以前の活動に比べても活動的なものであった。群発地震活動は7月4日にピークをむかえたが、そのピークを過ぎた7月11日に、1978年からの活動において初めて連続微動が観測され、7月13日には海底噴火が起きた。1989年6~7月の群発地震活動において最大の地震は1989年7月9日に起きたM5.5の地震である。この地震は噴火口である手石海丘に隣接して発生した地震である。群発地震活動はマグマの貫入によると考えられており、そのマグマの貫入がその周辺の応力場に影響を与えていたと推定される。7月9日の最大地震もそのような場において発生しており、火山活動地域における地震発生の場について検討する上でも重要と考え、この地震の破壊開始点について調べた。用いたデータは、気象庁87型電磁式強震計の記録及び周辺の高感度地震計により観測された波形記録である。P波の到着時刻、破壊開始点の位置と地震波形との関係、初動の振動方向等から破壊開始点の位置について検討した。その結果最大地震の震央は噴火地点から西側の離れた場所にあり、また、破壊は断層下部から始まったと推定した。
著者
高木 聖
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.215-223, 1972-12-25 (Released:2012-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1970年,気象測器工場に,強震計検定用の振動台が出来たので,この上に,人間を乗せて,震度の人体実験をおこなった。震度は人体感覚によって判定する以外に方法がないので,この実験が意味を持つことになる。実験の結果は第1図に示してある。測定値は表になっている。震度は記号で表現した心これらの震度が,第1図の破線(従来の加速度level)で区分出来ないのは,震度は加速度で規定出来ないことを示している。これらの震度は,第1図の実線で区分され,震度は energy に関係があることを示している。それゆえ,震度は,単位時間に単位面積を通る地震波の energy の対数に比例する,と考えられる。
著者
当舎 万寿夫
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.239-244, 1962

大阪管区気象台のレーダによつて得られたエコー高度の観測データに基づいて我が国の驟雨と雷雨の判定基準が出されている。大阪のレーダは気象研究所のものと性能が大体似ているので,先に筆者と市村の求めたレーダ因子がそのまま使える。これによつて補正を行い,雷雨と驟雨に分けた。高層気象観測のデータは潮岬のものを用い,レーダエコーの高度とその高度に対応すを気温を求めた。<BR>得られたレーダ観測資料をすべて適用すると臨界値として-9.8℃ の温度値がえられた。<BR>不連続面の存在している場合を除外して,同一気塊内における雷雨や驟雨のものに限定すれば,臨界値は-15.0℃になつた。<BR>この値は気象研究所のレーダにて求めた同一気象条件のもの(-15.6℃)に近い。よつて,我が国の雷雨判定規準として,雲頂高度が-15℃~-16℃の等温層を越えるものにとりうる。<BR>不連続線によつて発生する雷雨では規準高度が低い,雲頂高度が低い所でも雷の発生を認めることになる。これは不連続面の場合,大きな乱れ作用によつて帯電現象が早く起ることになる。
著者
北畠 尚子 津口 裕茂
出版者
Japan Meteorological Agency / Meteorological Research Institute
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.1-19, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
17

本研究では、2016年8月31日に日本海で974 hPaまで深まった低気圧について、JRA-55再解析データを用いて解析を行う。この低気圧は台風第10号(T1610、アジア名Lionrock)を吸収して発達したように見えた。この日本海の低気圧の深まりは、比較的弱い傾圧帯で生じ、上部対流圏の高渦位空気が傾斜した等温位面上を南東・下方へ移動してきたのに伴っていた。対流圏の中・下層の昇温も地上低気圧の深まりに寄与していた。低気圧の発達の最終段階には、上層トラフとT1610とのカップリングが生じた。T1610は、日本海の低気圧の発達初期にも、台風とその北の高気圧との間の南東風で下層湿潤空気を日本海へ輸送することで、低気圧発達に寄与した。日本海における潜熱解放は、その北東側の上層リッジを強化することでその後面のトラフとの間の渦度移流を強化することでも、日本海の低気圧の発達に寄与したと考えられる。
著者
田中 泰宙 折戸 光太郎 関山 剛 柴田 清孝 千葉 長 田中 浩
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.119-138, 2003 (Released:2006-07-21)
参考文献数
80
被引用文献数
40 94

大気エーロゾルとその関連物質の分布の研究のために新たに開発された3次元エーロゾル化学輸送モデルModel of Aerosol Species IN the Global AtmospheRe (MASINGAR) の詳細を記す。MASINGARは大気大循環モデルMRI/JMA98と結合されたオンライン・モデルである。MASINGARは非海塩起源硫酸塩、炭素系、鉱物ダスト、海塩起源のエーロゾルを含み、移流、サブグリッドスケールの渦拡散と対流による輸送、地表面からの物質の放出、乾性・湿性沈着、化学反応を扱う。移流はセミ・ラグランジュ法によって計算される。積雲対流による鉛直輸送は荒川・シューバート法の積雲対流マスフラックスを基にしてパラメタライズされている。モデルの空間・時間解像度は可変であり、T42 (2.8°×2.8°)、鉛直30層 (0.8hPaまで)、で時間刻み20分での積分が標準的に扱われている。さらに、モデルは同化気象場データを用いるナッジング手法による4次元同化システムを内蔵し、これによって特定の期間の現実的なシミュレーションやエーロゾルの短期間の予報が可能となっている。2002年4月の鉱物ダストエーロゾルのシミュレーションから、MASINGARによって総観規模のエーロゾルのイベントが良くシミュレートできることが示唆されている。
著者
湊 信也
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.103-114, 1996
被引用文献数
4

&sigma;-座標系で書かれているプリンストン・オーシャン・モデル (POM) を使って、瀬戸内海の潮汐と高潮の数値シミュレーションを行った。潮汐のシミュレーションでは天文潮と比べて、特に振幅と位相の大域的な分布がよく合っている。高潮のシミュレーションでは、各地で観測された水位の時系列と似た計算結果が得られたが、違いもいくつか見られた。観測値との差は、海域全体にわたる海上風の詳細な分布とモデルの解像度の不足のせいであると考えられる。海上風と解像度は沿岸域の高潮を再現する上で、非線形性や3次元性よりも重要な要素である。<br> シミュレートされた各地の高潮の最大値は、3次元計算の方が2次元計算よりも最大10%程度大きかった。その理由を物理的に考察した。<br> 今回のシミュレーションでは、潮汐と高潮はほぼ独立であり、これらを別々に計算した結果の重ね合わせで、潮位が得られることがわかった。
著者
Wadati Kiyoo Hirono Takuzo Yumura Tetsuo
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.49-78, 1969
被引用文献数
51

i)S波吸収の強さの地域的分布を深発地震のloog(<I>A/TB</I>)-△ 曲線によって調査し,日本の地下における地震波の吸収係数を求めた。それらは平均値として,西日本に対しては 4.6×10<SUP>-3</SUP>/km,東日本では10<SUP>-4</SUP>/km程度である。<BR>ii)震源分布から地震活動帯(<I>SA-zone</I>)の構造を明らかにした。<I>SA-zone</I>は浅発地震活動帯(<I>SSA-zone</I>)と深発地震活動帯(DSA-zone)とに大別され,その分岐線が,ほぼ盛岡一白河線(<I>MS</I>線)および別府一鹿児島線(<I>BK</I>線)に沿っていることを明らかにした。これらの線は活火山帯と位置的に密接な関係がある。<BR>iii)地震波吸収の強さは一般に<I>SA-zone</I>において小さく,その他の地域で大きい。特に,<I>SSA-</I>,<I>DSA-zone</I>にはさまれた地域(<I>SD-Gap</I>)においては分岐線に近い部分ほど大きく,それより遠ざかるにしたがって小さくなる。<BR>これらの事実と異常震域との関連について述べた。
著者
荒川 秀俊 渡辺 和夫 土屋 清 藤田 哲也
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.163-181, 1972-12-25 (Released:2012-12-11)
参考文献数
15

亜熱帯性メソサイクロンが各種大気じょう乱の聞で占める位置づけを,その大きさと強さによって求めたところ,温帯性メソサイクロンと弱い熱帯低気圧の中間に在ることがわかった。洋上に発生して,100kmからせいぜい200kmほどの大きさを持った亜熱帯メソサイクロンを既存の地上観測網で捕捉する機会はきわめて少く,したがって,その構造や性質を調べる手掛りはほとんどない。たまたま,1960年9月1日のこと,メソサイクロンが東支那海に発生して北東に進んでいることが名瀬レーダーで発見された。それから一昼夜して,それが九州中部に上陸して消滅するまでの状況をかなり刻明に記録することができたので,このじょう乱が亜熱帯メソサイクロンの良い例では決してないが,このケースを調べることによって,メソサイクロンの一般的構造や性質をうかがうことにした。メソサイクロンは亜熱帯じょう乱としての螺線状降雨帯を持っているが,中緯度に進んで来ると共に,収束の大きな東半円内にある降雨帯で数多くの積乱雲が発生して顕著なメソ高気圧を作ってゆく。ところで,じょう乱の主体であるメソサイクロンのスケールと副産物的なメソ高気圧の大きさと強さが同じオーダーであるために,後者は前者の構造を著しく変えてしまうことが特徴である。また循環が弱いために対称的構造をとることができず,著しい非対称になっていることも特徴といえる。限られた高層観測点と山岳測候所で得られた資料の時系列を使って内挿をほどこし,1kmから14kmまでを1km毎に14層の等高度面天気図を作ることによって3次元解析を試みた。その結果として,亜熱帯メソサイクロンへの空気流入量は,巨大積雲のそれと,発達期にある台風への流入量の丁度中間であることがわかった。
著者
北畠 尚子
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.97-114, 2008
被引用文献数
6

台風0423号(アジア名Tokage)は2004年10月に強い勢力で西日本に上陸し、東日本で温帯低気圧化した。この台風は進路左側を含む大雨と強風が特徴であった。この台風について気象庁領域客観解析(RANAL)を用いて診断を行った。台風が西日本に上陸した際には台風は上層ジェットストリークの入り口及びトラフ下流に位置していたが、トラフは比較的弱いもので、温低化後に再発達がなかったことに整合的であった。台風の強い下層低気圧性循環が西日本に以前から停滞していた下層前線を強化し、最終的に台風はその傾圧帯で前線性低気圧に変わった。台風が上部対流圏ジェット気流に接近したことによる条件付対称不安定と、前線帯の寒気側かつ日本海南部の比較的暖かい海面上の下層条件付不安定が、台風の進路左側である西日本日本海側の降水に寄与したと考えられる。台風の中緯度での勢力や構造に対する大気海洋相互作用の影響についてさらに研究する必要がある。
著者
伊藤 耕介 沢田 雅洋 山口 宗彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.15-34, 2018 (Released:2018-06-11)
参考文献数
41
被引用文献数
1

台風予測に関する高解像度領域非静力学モデルの性能評価を行うために,5 kmメッシュの気象庁非静力学大気モデル(NHM5km_atm)及びそれに海洋モデルを結合した大気海洋結合モデル(NHM5km_cpl)を用いて,北西太平洋全域を計算領域とした台風予測実験を行った。計算対象は2012-2014年の1200UTCに台風が存在したほぼ全ての事例であり,予測時間は3日間である。本研究では気象庁全球モデル(GSM)の出力を0.5度格子に粗視化したものを初期値・側面境界値として用い,NHM5km_atmとNHM5km_cplによって得られた台風の進路と強度の予測精度をRegional Specialized Meteorological Center (RSMC) Tokyoベストトラックに対して検証し,またGSMの予測精度とも比較を行った。実験の結果,24-60時間の進路予測に関してはNHM5km_atmとNHM5km_cplはGSMよりも良く,特に水平風の鉛直シアが強い場合に改善率は最大20%に達した。ただし,統計的にはこれらの平均値の差は,両側検定で信頼水準90%を超える改善とは認められなかった。強度予測に関しては,初期時刻において強い台風が現実的に再現されていないことがあり,短時間予測の誤差は大きいものの,2日以上の予測に関しては,NHM5km_atmとNHM5km_cplはGSMに比べて20%以上の改善が認められ,統計的にも非常に有意であることが明らかとなった。またNHM5km_cplはNHM5km_atmに比べて,台風強度は平均的に見て弱く再現される傾向にあったものの,変化傾向の相関係数に関しては改善傾向を示していた。このほか,台風の中心決定方法が短時間の進路予測に対して数%程度の影響を及ぼすこと,最大風速予測の成績は参照するベストトラックデータの種類にも依存することが明らかとなった。
著者
赤松 英雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.95-115, 1982 (Released:2007-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
16 18

長崎港におけるセイシュ (あびき) について統計的に処理し、つぎのような結果を得た。3月が最多発生月であり、年間の発生数は年によりかなり変動がある。また、振幅別発生回数は40∼60cmのものがきわめて多い。「あびき」の継続時間は最大振幅が発生したのち3~4時間後には振幅は1/2~1/3に減少する傾向がある。「あびき」の週期は35分前後のものが多く、長崎港の固有振動の基本モードの周期に一致する。 つぎに1979年3月31日に発生した巨大「あびき」について、その実況を検潮記録から求め、最大振幅が278cmであった事を示した。グリーンの法則から湾口に到達した第一波の波高は約20cmと推算した。また、過去の増幅係数から湾奥の最大振幅は467cmと推算した。 「あびき」による被害について、もっとも典型的なものを2例述べた。 さらに、「あびき」の振動分析から、35~36分、63~67分、17~19分の周期のパワーが大きく、そして今回の「あびき」発生の引き金になった気圧急昇について、各地の気圧記録、高層気象観測資料、ひまわりの可視画像、及び気象レーダー資料から分析した結果、局地的な寒気の流入によるものであった事を示した。 長崎港の振動特性を知るためには数値実験を行い、湾内15点の潮位変動には、35分、20分及び10分の周期の振動が存在し、それぞれの周期は湾の基本振動 (単節)、2節、及び3節振動であることを示した。 これらは、日比谷、梶浦 (1981) の数値実験から得られた結果とほぼ合致し、巨大「あびき」は長崎港内で効果的に増幅された結果によるものであることを述べた。
著者
当舎 万寿夫 Ichimura I.
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.18-29, 1961
被引用文献数
4

Radarによる雲のecho観測で,そのtop高度による驟雨と雷雨の判定法がのべられている。このために,RHIによるecho観測が用いられ, echo top の高度比較をなすのにビーム幅による補正,電波屈折率や地球の曲率に関する補正,radar反射率に関する補正を行つた。館野におけるradio sondeの dataより echo top の温度がきめられ,雲の過冷却部における厚さと零度層高度との関係が掛された。驟雨と雷雨についての累積頻度曲線をつくつてみると,echo topの温度でcritical vaiue として-15.6°Cをえた。これは雲頂が一15.6°C層以上に成長すれば90%の出現率で雷雨になる。この層に達しない雲頂は90%で験雨になる。この高さは7.5kmから 8.2kmの問にある。<BR>雷雨における上昇気流の速さが水滴の凍結過程によつて計算され,凍結開始高度からの雲頂高度より求めた。この結果,平均して,雷雲内の上昇気流はかなりの速さになつている。-15.6°C層の面において,上昇気流の速さが水滴の半径に関係する Critical value以上になれば,その地域に雷雨の発生する必要条件を求めうる。
著者
浜田 信生
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.77-156, 1987 (Released:2007-03-09)
参考文献数
224
被引用文献数
12 8

長い時間スケールを持つ地震活動に対し、古い地震資料の精度の再評価による解明を試みた。まず過去60年間の地震観測の歴史を概観し、観測体制、運用状況を考察することにより、観測の精度、地震検知能力がどのように変化したかを把握した。次に観測の時間精度と震源決定精度の関係を、各時代につき実際例から調べ、古い観測資料の精度が今までの研究では、過小評価されてきたことを明らかにした。二重深発地震面、大地震の余震域の形状と本震の震源過程などについて行われている最近の解析方法が、古い地震活動についても適用可能となったばかりでなく、新たにサイスミシティの経年変化などを追跡する道が開けた。以上の結果を踏まえて、1940年代から1960年代にかけて日本列島の内陸部で発生した、主な被害地震の本震余震分布の再調査を進めた。再調査の結果から、いわゆる直下型地震の震源過程、先行地震活動や前震活動、余震活動の減衰の仕方など、今日の地震学の一般的な問題について考察を加え、幾つかの結論を導いた。
著者
K. Saruhashi
出版者
Japan Meteorological Agency / Meteorological Research Institute
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.38-55, 1955-08-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
16 29

It is of importance to study the behaviour of carbonic acid substances dissolved in natural water in order to know the chemical properties of the water. Acidity or alkalinity method has been generally used for this purpose for a long time. But this method often leads to erroneous results.The present auth or proposed that a better way is to determine first the amount of total carbonic acid, pH and temperature, and then to calculate theoretically the amount of H2CO3, HCO3- and CO3- using equilibrium constants between them.However, such a calculation is too laborious for every analyst, and therefore the author completed tables convenient for use containing calculated values of molar fractions of each carbonic acid substance for different temperature and pH in fresh water and sea water. In these tables, one can find any necessary values of molar fraction when the total amount of carbonic acid, temperature and pH of waters are given. By the use of this method, exact determination of the amount of each carbonic acid substance in water is made possible.
著者
Kano M.
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.356-360, 1960

太陽輻射の波長別測定を用いて大気中のaerosolの粒度分布を求める新しい光学的方法を得た 地上又は高所で測定されるaerosolによる波長刷の減衰係数は大気中にある種々の大きさをもつaerosolの波長別減衰係数の総和である すなわち各波長におけるaerosolによる減衰係数はこれらのaerosolの数(求める未知数)を含む方程式で示される そこでaerosolを大きさに従って幾つかに組分けし その組分けの数に等しい数の種々の波長の所で太陽輻射の減衰を観測すると 未知数(各組のaerosolの数)に等しい数の連立方程式が得られる するとこの式は一般に一義的に解が定まり 従って各組のaerosolの数すなわち粒度分布が求められる ところが一々このような方程式を解くことは極めて煩雑で不便であるので この連立方程式をmatrix表示し 既知係数よりなるmatrixの逆matrixを計算し このmatrixの要素表を作成しておけば この表より観測値を用いて簡単な計算によって aerosolの粒度分布が得られることを示す
著者
Inouye W.
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.177-192, 1959
被引用文献数
3

日本の地震観測の資料から深発地震の規模を求めるという試みは,既に和達,本多,広野,岩井,勝又によってなされている。<BR>然し,地球上層の地震波の速度分布,波動の減衰係数の分布などが十分分つていないばかりでなく,波動減衰の機構も明確でない。また,地震動に対する地盤補正も,深発地震では異常震域を伴うので当然浅発地震の場合とは異なる筈である。<BR>なお,発震機構によつて実体波の振幅の方位差も考えられるので,蛇足のようであるが,この問題を取扱つてみた。<BR>主な結果は次のようなものである。<BR>(1)NORMAN RICKERの連波説によつて計算したlog<I>A</I>/<I>T</I>-Δ 曲線は観測値と比較的よく一致する。<BR>(2) M≦7の場合は<BR>0.63M=log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>+α(<I>H</I>)<BR>によつて,<BR>M>7の場合は<BR>{0.63+0.08(log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>+α(<I>H</I>)-4.4)}<I>M</I>=log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>+α(<I>H</I>)によつて深発地震の<I>M</I>が求められる、但し,α(<I>H</I>)は深さによつて異なる常数であつて,α(<I>H</I>)=2.5log<I>T</I><SUB>0</SUB>-2.8によつて与えられる。此処に,<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>は震央における<I>A</I>/<I>T</I>の値であり,<I>T</I><SUB>0</SUB>は震央における<I>S</I>相の走時である。<BR>(3)深発地震に対する地盤補正は浅発地震に対するものと著しく異なつている。<BR>(4)観測されるlog<I>A</I>/<I>T</I>は震源における方位に関係があり,断層面に直角の方向に大きくなつているようである。<BR>(5)<I>M</I>を求めるときの基本となる<BR>log<I>A</I><SUB>0</SUB>/<I>T</I><SUB>0</SUB>∞0.63<I>M</I>という関係は,坂井の半無限弾性体の内部に震源のある場合の波動理論によつて説明される。<BR>然し,最も大事な地球上層の地震波の速度分布および波動の減衰係数の分布は将来の問題として残されている。
著者
高木 聖
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.111-123, 1974-09-25 (Released:2012-12-11)
参考文献数
7

地震は断層の生成によって起こると仮定して,多くの学説が組み立てられているが,はたして,地震は断層の生成によって起こっているであろうか.地震が断層の生成によって起こっているとするならば,地震現象としては,初動分布が4象限型になっていなければならない.初動分布は,震源の最初の動きを表示しているものであるから,すべての地震学説に対して生殺与奪権を握っている.ところが,筆者が,たびたび報告しているように,初動分布は4象限型でないと考える方が,現象に忠実である.本文に,その,はっきりした例を示している.
著者
市川 政治
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-134, 1986
被引用文献数
5

地震予知研究のため、地震をはじめとして各種の観測網が整備され、データが急速に蓄積されつつある。その結果、地震の前駆現象は単純なものでないことが明らかとなってきた。大きな地震の前駆的異常現象として、前震、バースト、群発地震、地震空白域、地震活動の静穏化、発震機構の変化、その他が認められている。しかし、これらの現象は大きな地震の前に必らず出現するものでなく、また、出現したからといって必らずしも大きな地震が発生するものでもないらしい。さらに、これらの現象の発生には地域性があるとされている。<br> 大地震の前駆的異常現象について、これまで多くの研究がなされているが、これらの研究における異常検出の基準は必ずしも同じではなく、また、各種の異常を総合的に調べた事例は少ない。そこで、1926-1983年までに主として日本内陸に発生した深さ30km以浅で規模M5以上の地震を対象にして、同一判定基準で、かつ、できるかぎり客観的に各種の地震学的前駆現象の検出を行った。これらの現象検出はM5以上の地震について、また、検出のために使用した地震のMは、データの均質性を保つために3.5以上とした。このほかに、これらM5以上の地震発生と活断層、地質断層や歴史地震との関連も調査した。<br> 地震発生と検出した各種現象との関連性を統計数理研究所の坂元らの開発したプログラムCATDAPにより解析したところ、大きな地震に最も強い関連のあるものは、地震空白域、ついで、バースト、また、地震空白域と前震、バースト、地震活動静穏化現象との組合せも、大きな地震の発生と強い関連性を持つという結果が得られた。さらに、活断層や歴史地震は大きな地震の発生とは独立であるという結果も得られた。歴史地震と大きな地震の発生が独立であるという結果は、内陸浅発地震の再来周期の長さから妥当なように考えられる。<br> さらに、地震発生のパターンには顕著な地域性が認められた。<br> 以上の諸結果に基づいて、内陸浅発の大きな地震発生の長/中期的予測のために有効と考えられる地震学的前駆現象の検出手法を検討してみた。
著者
Kizawa Takashi
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.204-239, 1959
被引用文献数
2

火山学史上世界的に著名な昭和新山の生成には,3つの著しい地震群が発生した。第1報にこれ等の諸性質を明らかにした。筆者は今回昭和新山を取囲む3観測所,札幌(Δ=69km),森(Δ=54km),室蘭(Δ=25km)で観測された地震波動の性質を詳細に究明し,火山活動の予知及び活動機構を解明する手懸りを得る目的で,第1報に引続いて研究を行つた。得られた主な結果は次の通りである。<BR>(I) 噴火に先行して発現した<I>A</I>-型地震群(1943Dec.-1944Apr.)の振幅は,大小様様の大きさで起つている。そして噴火に近づくとその振幅は,exponentiallyに減少して来る。然るに,噴火終了直前から発生してその後1ケ年間継続した,Lava Domeの成長に伴う地震群(<I>B</I>-型と名付く)の振幅は,前者に比べて可なり小さく,しかも全期間を通じて殆んど同じ大きさで起つていた。これ等の事実は両地震群の震源の深さの違いに起因する事を示して注目に値する。<BR>(II)水平動両成分の最大振幅のratio(<I>A<SUB>N</SUB>/A<SUB>E</SUB></I>)のをとると,<I>A</I>-型地震群は<I>A<SUB>N</SUB>/A<SUB>E</SUB></I>>1となり,B-型地震群は逆に<I>A<SUB>N</SUB>/A<SUB>E</SUB></I><1となつて明確な対照を示した。即ちここにも両地震群の震源の深さ,及び発震機構に,著しい相異のある事が見事に示された。<BR>(III)活動の初期(1944 1月)<I>A</I>-型地震群の中の主な10個の地震には<I>P</I>波の初動が明瞭に現れた。それ等は,札幌と森が押しで室蘭が引き波に現れた。現地に於ける震源の移動と比較して注目すべき結果が得られた。<BR>(IV)群速度の著しく遅い明瞭な2つの相が,森測候所(Δ=54km)に顕著に現れた。そしてそれはB-型地震群に,特に,両相共鮮明である。仮に,これ等を3相,4相と名付けると,3相の速度は,1km/sec足らずで出現し,4相は約340 meter/secで始り,その後に一定周期の波が続く。<BR>この度,発見されたこれ等の明瞭な2つの相はそれぞれAiry phase及びAir-coupled Rayleighwaveと考えられる要因が非常に強い。若しそうだとすれば, Airy phaseとAir-coupled Rayleighwaveが同一地震に出現した事となる。この事実は,今日まで世界中殆んど例がない。<BR>この稀有な現象が起つたのは,震源の深さ,海の深さ,海底の条件,(森測候所のpathは海である)層の数の問題, 及び発震機構等の条件に起因する為と考えられるから,更に今後これらの研究を進めねばならない。併し,このうち震源の深さと,発震機構の問題は特に,これ等2つの相と密接な関係を持っと考えられるので,火山活動の原因を究明する上に重要な,手懸りを与えるに違いない。<BR>Air-coupled waveについて:-<BR>大気と海とは2つの媒質のdensity constantの違いが,非常に大きいので,両者のcouling等考えるさえ誠に驚くべき事柄である。<BR>この問題の発端は,1883年有名なKrakatoaの大爆発の際に,世界中いくつかの地点で,観測されたair wave arrivalとtidal disturbance waveの到着時の一致と云う点から始まる。<BR>この現象に,M. EWINGとF. PRESS等が着目して, Air-coupled waveの構想を1950年よりこの方,一連の理論や実験により打ち建てたものである。今回このphaseの存在を独自に自然現象の中に発見したわけである。<BR>(V) 3相,4相の振幅比が,時と共に変化する状態から見ると,<I>A</I>-型地震群の震源は,噴火に近づくと浅くなつて行き,<I>B</I>-型地震群は噴火から遠ざかると震源が深くなつて行く傾向のある事を知つた。この深さが問題である。