- 著者
-
増田 喜治
浅野 涼子
J.H ジャンゼン
D.R ジャンゼン
- 出版者
- 名古屋学院大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
聾学校に通学中の3名の人工内耳装用児に日本人と外国人英語教師による英語教育とシドニー在住で英語を母国語とする人工内耳装用児との交流の場を提供した。言調聴覚論を基礎としたグループレッスンを名古屋学院大学・白鳥キャンパスで合計25回、スカイプによる個別の遠隔授業が50回行われた。身体運動を伴った発音矯正を常に行なったが、3名とも日英語の話し言葉の認知度は3年間で変化することなく、約60%程度であった。しかし、英語レッスンに参加した時の学習意欲は常に高く、楽しい授業展開であった。一方、スカイプを利用した遠隔レッスンではパソコンとデジタル通信に伴う障害を乗り越えて、各装用児がパソコンに向かい、自分のペースで教師の映像、音声と振動情報を頼りに、英語学習を行なった。スカイプのチャット機能を利用し、文字言語を利用した意思疎通も日英語で行なった。ただし、英語に対する一人一人の学習意欲はグループレッスンと比較すると高いとは評価できなかったが、シドニーにおけるホームステイの活動目標により、学習意欲の継続的支援となった。国際交流プログラムでは、平成22年の夏に代表2名がシドニー在住の人工内耳装用児宅でホームステイを行い、異文化体験した。また、シドニーの装用児との交流を通して彼らの言語訓練プログラムと置かれている環境を体験した。更に4ヶ月後にはシドニー在住の装用児が名古屋を訪れ、ホームステイを通して互いに活発な文化交流を行なった。本研究は、日本在住の人工内耳装用児たちに対して英語教育を行なうだけではなく、同様の障害を持ちながらも異なった文化背景の中で、継続的言語リハビリテーションを受けた英語を母国語とする人工内耳装用児とホームステイプログラムにより交流することができた。今後、彼らが日本と世界に在住する人工内耳装用児・者との交流に貢献が出来るような基盤が築き上げられたと本研究グループは確信している。