著者
熊野 直樹
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究で明らかにしたように、第二次世界大戦期の独「満」関係においては、国家による一元的な統制の下、阿片とモルヒネが直接取引されていた。しかも大戦末期においては、ドイツ滞貨としてナチの阿片が日本に輸出されていた。ドイツと東アジアとの関係においては、連合国軍による海上封鎖にもかかわらず、独「満」阿片貿易や独日阿片貿易の他に、独日コカ貿易も行われていた。いわば、ナチス・ドイツと日本と「満洲国」間で麻薬貿易が行われていたのであった。大戦中、ナチス・ドイツと日本と「満洲国」は、阿片やコカといった麻薬貿易による緊密な通商関係を維持していたのであった。
著者
太田 成男
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

私たちは、水素ガスを吸入することで、虚血再灌流障害をはじめとする酸化ストレス障害を軽減することを動物実験で示した。本研究では、動物実験によって有効な投与法を詳細に検討した。さらに、臨床試験によって、水素ガス吸入は脳梗塞と心肺停止後蘇生後に予後改善に寄与することを示唆した。また、分子機構としては、水素はリン脂質の酸化反応に介入し新たなシグナル伝達分子を作り、カルシウムシグナル伝達を抑制し、転写因子のNFATの活性を抑制することを明らかにした。NFATは、多くの因子の遺伝子発現を制御するので、水素が多様な作用を発揮することが可能になる。
著者
近藤 尚己 石川 善樹 長友 亘 齋藤 順子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

疾病予防行動の社会経済格差是正に向け、人の持つ認知バイアス効果を応用した行動科学アプローチの枠組みを整理したのち、実証研究を行った。健康チェックサービス事業者のデータを用いて、サービス利用の勧誘の際、従来の健康リスクの理解を促す方法と、サービスへの興味関心を引きやすい感性に訴える方法を用いた場合の利用者の属性を比較したところ、後者の方が社会的に不利な状況(無職者など)の割合が高かった。足立区と区内26のレストランと合同で行った、野菜増量メニュー注文者に対する50円割引キャンペーンの効果検証の結果、普段昼食に支払う価格が最も少ない人々でキャンペーンの効果が最も高まり、店舗の売り上げも増加した。
著者
齋藤 馨子 和氣 洋美 厳島 行雄 五十嵐 由夏
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

痴漢被害に関する質問紙調査では、女性の約37%、男性の約5%が痴漢被害を経験しており、痴漢被害部位の多くは臀部であることが示された。痴漢被害遭遇時は目視による犯人確認が困難であることも明らかとなった。また、痴漢と判断される行動が混雑した公共交通機関内で容易に生じることも確認された。身体接触に関する調査では、身体接触を基本的に不快と感じることが示された。触判断に関する実験的検討では、視聴覚情報が遮断された状態で背後の他者の立ち位置を感じることはできず、刺激の動きの有無や連続提示にかかわらず、臀部では触覚情報のみによって対象を正しく判断することは困難であることが明らかとなった。
著者
武藤 浩二 長島 雅裕 原田 純治 安部 俊二 古谷 吉男 上薗 恒太郎 小西 祐馬
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、疑似科学が用いられた学校教育の実態等を調査するとともに、最近の大規模調査データを用いた血液型と性格に関する解析を行った。その結果、疑似科学言説を用いた授業の多くが「水からの伝言」とその派生物であること、ほぼ全国で行われており高校理科で肯定的に扱われている事例もあることを明らかにした。また血液型と性格に関する解析では、過去の研究結果を拡張することができたとともに、21世紀以降のデータでは、安定して血液型ごとに性格の自己申告について有意な差が出ることが判明した。
著者
小野 道之 竹内 薫 北村 豊 森川 一也 保富 康宏
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Human Hepatitis E Virus (HEV)のカプシドタンパク質が自己会合したVirus-like particle (VLP)は、消化耐性と腸管免疫誘導活性を持つ、食べるワクチンとして注目されている。インフルエンザの共通抗原であるM2エピトープを融合したHEVのカプシドを、果実特異的なE8プロモーターの制御下で発現する遺伝子組換え栽培トマト(Solanum lycopersicum cv. マイクロトム x 愛知ファースト)を作出した。遺伝子組換え植物用の特定網室で栽培することにより、各種の動物実験に資するに十分量の果実を収穫した。
著者
榎本 俊樹 小柳 喬
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

フグ卵巣は塩漬け・糠漬けすることで毒性が低下した。また、これらのサンプルからTTX及びその類縁体である5,6,11-trideoxytetrotodoxin(TDTTX)が検出された。TTX及びTDTTXは糠漬けに伴い減少することから、TTXは分解されることで毒量が減少することが示唆された。フグ卵巣の糠漬けの菌叢について検討したところ、主要な乳酸菌は、Tetragenococcus muriaticusと同定された。さらに、Bacillus属及びClostridium属の細菌も主要な菌叢であった。これらの細菌のTTX分解への関与については、今後の研究課題として残された。
著者
石居 正典 木下 基
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

従来の電磁界センサでは、センサの部分に金属製のアンテナが利用される。この場合、測定対象となる電磁界に対して、金属製エレメントがじょう乱を与えるという問題があった。そこで最近、金属製のアンテナを利用せずに量子現象を動作原理のベースとする、新しいタイプの電磁界センサに関する研究を開始した。この新しいタイプの電磁界センサでは、センサの部分にセシウム(Cs-133)の気体原子を封入したガラスセルを使用する。本センサは非金属であるため、測定対象となる電磁界に与えるじょう乱を低く抑えられる事が期待できる。本研究では、この量子現象を利用した新しいタイプの電磁界センサの動作原理に関して、初期検討を行った。
著者
櫛引 美代子 工藤 優子
出版者
弘前学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

乳房緊満に対するキャベツ葉湿布の冷却効果について検証することを目的に、キャベツ葉を用いて、同意を得られた20歳代非妊娠成人女性34名、褥婦3名を対象にキャベツ葉冷湿布実験を行い、湿布剤貼付部位の温度、血流測定を行った。非妊娠女性のキャベツ葉冷湿布では皮膚表面平均温度は5分後に1.3℃下降し、15分後まで有意に下降した。30分後から皮膚表面平均温度は上昇傾向が認められた。褥婦の場合、キャベツ葉冷湿布5分後にいずれも急速に皮膚表面温度が下降し、10~25分後より徐々に上昇した。乳房例では冷湿布開始時に血流が低値であったが、徐々に血流の増加が認められた。キャベツ葉冷湿布は緩徐な冷却効果が示唆された。
著者
長島 裕二 永井 慎 小林 武志 桐明 絢 太田 晶 岡山 桜子
出版者
東京海洋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

フグ毒テトロドトキシン(TTX)は水圏環境に広く分布しているが、TTXの分解に関する知見はほとんどない。そこで本研究では、製造工程中にフグ毒の毒性減少が知られているフグ卵巣糠漬けに着目し、TTXを分解する微生物と酵素をスクリーニングして、自然界におけるTTX分解メカニズムの解明に資することを目的とした。しかしながら、結論として、フグ卵巣糠漬けの毒性減少に微生物はほとんど関与しないことがわかった。一方、フグ卵巣糠漬け製造にかかわる微生物叢を次世代シーケンサーで調べたところ、極限環境微生物が検出され、これら微生物が干渉現象で有機物の分解、抑制を行っていることがメタゲノム解析により明らかとなった。
著者
石井 信之 伊藤 寿樹 武藤 徳子 室町 幸一郎
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究目的は、MG使用によるSAR症状改善効果を分析し、SAR症状発症における唾液の役割を明らかにすることであった。MG装着前およびMG装着後の唾液流速を分析し、唾液中のIgAおよびIgG4の量を測定した。 MG装着によるアレルギー性鼻炎症状と唾液各因子の相関関係を評価した。唾液中IgA濃度はSAR患者で有意に減少。 SAR症状はMG装着により有意に改善された。唾液流量および単位時間当たりのIgA総量は、MGの使用と共に有意に増加したが、IgG4総量は変化しなかった。MG装着は、単位時間当たりのIgA総量を増加させることによってSARのアレルギー性鼻炎症状を改善することが明らかにされた。
著者
辻田 哲平 近野 敦 安孫子 聡子
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

災害現場でのタスクの実行方法については積極的に議論がなされているが,ロボットをいかにして災害現場に搬送するかといった重要な問題についてはほとんど議論がなされていない.そこで,ロボットを災害現場へ運ぶ方法の1つとして,飛行機からパラシュートを備えたヒューマノイドロボットを投下することを提案する. なかでも本研究では,ロボットの損傷防止のために着陸時の衝撃を全身運動で吸収する方法の確立を目指す.研究の初期段階として,小型の片脚ロボットを用いた落下試験を実施した.これらの実験から得られた観点から小型ロボットのパラシュート着地動作を試行錯誤的に設計し,衝撃による加速度を40%に低減することに成功した.
著者
谷口 貴章 横井 裕之
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

酸化グラフェンの還元により、室温強磁性体と室温超伝導体を創出することを本研究の狙いとした。酸化グラフェンの局所構造とマイクロ構造は還元手法により異なり、磁性も還元手法に依存することを明らかにした。この中で、光還元を行った場合は、炭素欠陥と部分的水素終端により強磁性を示すことを見出した。 電気化学酸化還元グラフェンについては、還元によりラジカルが消滅し、再酸化によりラジカルが生成する、可逆的な反応を見出した。室温超伝導については達成することができなかったが、酸化グラフェン電気化学還元における巨大磁気抵抗の可能性と大疑似キャパシタンス容量を見出した。
著者
今井 むつみ 岡田 浩之
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ヒトの非論理的だが効率のよい思考の背景に、本来一方向でしか成り立たないA→Bの関係の学習から逆方向のB→Aを同時に推論してしまう「対称性バイアス」があると言われている。このバイアスは私たちの言語学習と深い関連をもつと考えられてきたが、その詳細や発達的・進化的起源は不明である。本研究ではヒト乳児とチンパンジーの種間比較から、対称性バイアスがヒトで言語獲得以前に現れること、チンパンジーに比べヒトではこのバイアスが強く現れることを明らかにした。以上の結果をふまえ、対称性バイアスの発達や言語機能との関係等について考察した。
著者
三浦 典正
出版者
鳥取大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

癌細胞を形態上は正常形質に回帰させるヒトマイクロRNAを発見した。それは未分化型肝癌細胞の肝組織形成、奇形腫形成で発見し、そのメカニズム解析を本検討で行った。脱分化誘導の実態を、導入後3日目、5日目、7日目と経時的にそのDNAメチル化レベル及びRNAメチル化レベルを検討し、脱メチル化誘導が原因が重要な原因の1つと考えられた。メタボローム解析では、5日目にsilencingされ、その2日後にiPS細胞レベルの別の種類の細胞になることが分かった。520dの標的遺伝子の検討では、ELAVL2をはじめとする計3種類をルシフェラーゼアッセイで同定し得た。癌細胞は正常細胞になり得る初めての報告である。
著者
打出 喜義 杵淵 恵美子 水野 真希
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

日本では「掻爬」(D & C)法が主流とされながら、その実態は不明であった。我々は日本の中絶実態を明らかにするため、産婦人科医および看護者を対象に調査を実施した。その結果、D & Cが今でも最も使われている方法であること、WHOが標準的だとする2つの初期中絶法(吸引と薬物)のいずれも、日本ではあまり使われていないこと等が初めて明らかになった。より安全で信頼のおける医療を提供するため、知識を広め認識を改める必要がある。
著者
鈴木 珠水 馬醫 世志子
出版者
群馬パース大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

県内21校の高校生を対象に質問紙調査を行い、4,630名(有効回答率80.2%)から協力を得た。QEESI(化学物質過敏症のスクリーニング検査)で「化学物質暴露による反応」≧40、「症状」≧20、「日常生活の支障の程度」≧10の3条件が揃った対象者は415名(8.9%)であった。これを高リスク群とし、その他を対照群として化学物質過敏症の関連因子を検討したところ、「女性」、「アトピー性皮膚炎がある」、「金属アレルギーがある」、「手足の冷えがある」、「疲労を感じやすい」、「新築入居経験がある」、「異臭を感じている」、「自覚ストレスが多い」ことが化学物質過敏症の発症に関係すると考えられた。
著者
岡野 八代 野口 久美子 合場 敬子 影山 葉子 内藤 葉子 石井 香江 牟田 和恵
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果は、歴史的に、ほとんどの社会で女性たちが担ってきたケア実践、すなわち、育児や家事、介護や看護の経験から、女性の身体性がいかに社会的に構築されてきたかを分析し、身体をめぐる脆弱性の社会的意味や女性たちの意思決定のあり方に新しい光を当てた。本研究を通じて発表された論文・著書は、これまで社会的に過小評価されるか、社会的弱者へと押しつけられがちなケア実践を再評価するために、思想的、歴史的、そして実践現場のなかで、ケア実践の意味を新たに問い返した。
著者
一柳 廣孝 橋本 順光 金子 毅
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は4回の研究会をおこない、以下の方々の発表について検討した。志村三代子氏「戦後の『透明人間』-恐怖映画とジェンダーをめぐって」、鷲谷花氏「3DCGアニメーションにおける「不気味なもの」-または我々はいかに心配するのを止めてCGを愛する、ようになったか」、越野剛氏「ソ連におけるオカルト・超科学について」、濱野志保氏「写真と流体-ヨーロッパにおけるエネルギー写真と念写」。また、天理市に天宮清氏を訪ね、CBAに関するインタビューをおこなった。さらに雑誌「GORO」におけるオカルト関連記事のデータベースを作成した。今年度は本研究プロジェクトの完成年度にあたり、それまでの活動・研究報告の総括として「現代日本における「オカルト」の浸透と海外への伝播に関する文化研究研究成果報告書」をまとめた。研究会活動報告、本研究プロジェクトメンバーの研究成果などからなる「研究の概要」、「吉永進一氏インタビュー」、「新倉イワオ氏インタビュー」、「天宮清氏インタビュー」、「雑誌「GORO」オカルト関連記事一覧」が、その内容である。吉永氏の記事からは60~70年代におけるオカルト研究史、新倉氏からはテレビメディアにおける心霊シーンの変遷、天宮氏からは、日本におけるUFO研究の変遷とサブカルチャーへの影響関係など、きわめて貴重なお話をうかがうことができ、価値ある研究成果報告書になったと自負している。
著者
正高 信男
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ヘビの写真をもちいた筆者自身がおこなった最近の視覚探索課題の研究成果を総括した。ヘビの写真をもちいた視覚探索実験はパラダイムとして、安定して再現性がたかい状態で、簡便に被験者の恐怖および不安の水準を計測できるものであることが明らかになった。発達障害のある子どもでは、定型発達の子どもと比べて恐怖の水準がはるかに高いことが明らかになった。