著者
湯浅 将人 Breanne H.Y. Gibson Jonathan G. Schoenecker
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.373-380, 2020 (Released:2020-08-12)
参考文献数
42

骨格系の組織のうち,骨・筋肉組織は,人体の支持組織として不可欠な組織である.この筋骨格系の維持機能は非常に重要である.組織が損傷する,すなわち骨折,筋肉打撲といった筋骨格系の組織損傷は日常しばしば発生し,その組織損傷は直ちに正しく修復されなければならない.この修復機構は厳密に体内で制御されている.組織損傷の下では,凝固線溶系の活性化が不可欠である.組織内血管が,筋骨格系組織の損傷によって,破綻がおき,瞬く間に凝固線溶系カスケードが作用し修復機能が働く.フィブリンが形成され止血に働き,役割を終えたフィブリン網はプラスミンによって分解される.このプラスミンを中心とした線溶系は,実はフィブリンの溶解といった古典的作用だけでなく,多様な生理的および病態生理的作用を果たしている.本稿では,この凝固線溶機能と骨と筋肉組織修復の関与とその機序に関して,今までの知見とともに概説したい.