- 著者
-
今西 順一
Jun-ichi Imanishi
- 出版者
- 京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
- 雑誌
- 福祉社会研究 (ISSN:13471457)
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.50-63, 2001
本論文は、現行法制度の原則である民刑分離の下で、どのような制度が最も効果的に、犯罪被害者の財産的損害の回復を行うことが可能なのかを考察したものである。1章では、被害回復の方法の基本となる、民事手続においての被害回復について述べる。この方法は被害者が加害者に対して、(1)民事裁判を提起するか、(2)示談を成立させることが考えられる。しかし、これらの方法は損害回復の実効性に乏しいものである。というのも、加害者が無資力の場合、被害者は為す術がなく、泣き寝入りせざるを得ないからである。2章では、わが国の「犯罪被害者等給付金支給法」について述べる。この制度は犯罪被害者に対して、国家が見舞金を支給するというものである。ただ、この制度はその性格上、被害者の損害を補填するものではない上に、財源を税金によっているため、被害者救済の範囲も自ずと限界がある。3章では、実効性の高い損害回復制度として、犯罪者からの没収・追徴財産、罰金等を基とした、被害者救済基金のわが国への導入の可否について述べる。この制度はわが国でも実行が容易で、かつ効果的な被害者救済を行うことが可能と考える。