著者
KIKOMBO Andrew Kilinga
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

半導体デバイスの発展は個々の素子の微細化により進められてきた。しかし、素子の寸法が小さくなるにつれて量子効果(通常の回路動作にとっては望ましない影響)が顕著になり、近い将来に微細化の限界が避けられないとも言われている。その一方、量子効果を積極的に利用する研究も盛んに行われる様になり、CMOSに代わる次世代量子デバイスの候補として単電子デバイスが注目を浴びている。単電子デバイスを用いれば、超高集積かつ極低消費電力な集積デバイスの実現が可能である。しかし単電子デバイスの動作は現用のCMOSデバイスと異なるため、CMOSデバイスとは異なる新しい回路構成と信号処理の方法を考える必要がある。本研究では、量子ドットを用いた集積デバイスの一例として、量子ドットの構造的特徴と動作原理を生かした高空間分解能のフォトン位置検出センサの構築を行う。そしてその情報処理方法を画像処理サブ・プロセッサに拡張する。本研究は、フォトンの入射位置を正確に読み取る(空間的に高い分解能をもつ)センサの開発を行うことを目的とする。現在、フォトンの入射位置を検出するためには、Micro-channel plate(以下MCP)が用いられる。MCPの入射面に向かってくるフォトンは光電子増倍チャンネルの内面の伝導層に当たって光電子を発生させる。さらに発生した電子が多くの2次電子を発生させて光信号を増幅する。出力面から出てくる電子を観測することで、フォトンの入射位置を特定することが可能である。MCPの空間的分解能はチャンネルの配列ピッチで決まり、製造プロセス上、10μm前後が限界である。一方で、量子ドット集積体のドットピッチは数十ナノメートルであり、これをセンサとして用いることで空間的に高い分解能を得ることが可能である。そこで、これまで解析した量子デバイスの非線形特性を生かして、フォトンの(入射)位置を正確に検出可能なセンサデバイスを提案する。