著者
中尾 欣四郎 MENGA Kiluki NDONTONI Zan 田上 龍一 冨永 裕之 知北 和久 ZANA Ndontoni KWETUENDA Menga Kuluki MENGA kuluki
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

東アフリカのリフト湖であるキブ湖とタンガニーカ湖はいずれも世界有数の深湖である。両湖の深水層の安定状態の差異は湖史の違いに左右されている。キブ湖は南緯2度,東経29度に位置し,多雨な赤道気候帯に属している。湖の流域は北方のニヤムラギラ,ニーラゴンゴ,ミケーノ,カリシンビ火山群の活動により,エドワード・キブ地溝の地穀構造単位が分断されている。現在,湖は南端からルジジ川によって流出し,約150km下流のタンガニーカ湖に注いでいる。キブ湖の形成は50〜100万年B.P.で,タンガニーカ湖の2,000万年B.P.に比べて,新しい地穀構造運動に寄因している。湖面積は2,376km^2,湖を含む流域面積7,300km^2で,最大水深485m,平均水深240mと落ち込みの激しい湖盆形状はリフト湖の特徴の一つである。然し,キブ湖は最終氷期が終わる約1万年前までは,湖水位は現在より300m低い水準にあったことが,湖底堆積物から明らかである。また,湖底から発生し,堆積物起源のCH_4ガスの^<14>C年代は約1万年前であり,湖の拡大期と一致している。湖は水温構造から見て熱帯湖であり,表水層の深度は60〜90mで,この下面で,22.8℃〜22.9℃まで低下した水温はこれ以深では,湖底までゆるやかに上昇し,450m水深で,26.0℃を示している。なお,表水層下の深水層水温は経年的変動は認められず,極めて安定したメロミクテック傾向を示している。湖の水質はC1^<-1>が30〜68ppmで、SO_4^<-2>は2〜10ppmと低濃度であるが,Alkalinity(CaCO_3)やHardness(K+Na)が深水層で著しく高濃度となる。例えば,Alkalinityは,表層水630ppmから,底層水で3,200ppmと著しく増加する。流入河川では,北方の溶岩帯から流入する河川水の593ppmを除いて,すべて53ppm以下の低濃度であることからみて,湖底より火山活動に伴って供給された塩類である。さらに,同湖底から二酸化炭素(CO_2)とメタン(CH_4)ガスが供給されている。ただ,両ガスともに,深水層の水圧下では不飽和状態にあり,溶解度は30%を越えない。なお,常圧下では2.19リットルの試水から4.05リットルの混合ガスが発泡した。混合ガスの存在比は,CO_2が74%,CH_4が18%を占める。