著者
濱田 香澄 岡崎 慎治 瀬戸口 裕二 Kasumi HAMADA Shinji OKAZAKI Yuji SETOGUCHI
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.61-68, 2015-03-31

自閉症スペクトラム障害 (ASD) 児は不安やストレスへの対処能力の低さ (White et al. 2009)が指摘されている。本研究では不安の強い ASD 児に対して,対象児の興味関心のある鉄道路線図を不安の程度の尺度として用い,不安,緊張場面の想起,不安,緊張の数値化,対処法ついて指導者とやり取りを行った。指導前後の不安,緊張の高い場面だけではなく,期待に関する場面の想起があり,鉄道路線図が不安以外の感情のスケールとしても用いることができると考えられた。対象児の中には不安,緊張の高い場面であっても,事前に知らされている場合や有効な対処法を利用させることで,不安が軽減する場合もあった。不安を可視化することにより,自己の不安状態や対処法を客観視することにつながり,ASD 児自身が不安な出来事に対する事前の構えを持つこと,さらに,周囲の大人が ASD 児と共通のスケールを持つことによって,ASD 児の不安状態を把握することが可能である。