著者
石塚 勝美 Katsumi Ishizuka
巻号頁・発行日
no.5, pp.11-30, 2007-03-31

この論文は、1978 年以来南レバノンに駐留してきた国連レバノン暫定軍(United Nations Interim Force in Lebanon: UNIFIL)の設立初期の活動状況について論じている。UNIFILは、その活動の基準となった国連安全保障理事会決議425 に記された3つのマンデートを遂行することはできなかった。それは、国連PKOを行うために本来備わっているべき諸条件が満たされていなかったからである。イスラエルは、その後も4度にわたりUNIFILを無視した形で、PLOやヒズボラ等、南レバノン駐留の武装勢力に軍事侵攻を行っている。UNIFIL初期の活動状況の未熟さがそれ以降のイスラエルの横暴振りを許している結果になってしまっていると考えられる。UNIFILの事例をとっても、今後の国連PKO は、さらに強健なものになっていくべきであろう。
著者
石塚 勝美 Katsumi Ishizuka
巻号頁・発行日
vol.8, pp.37-55, 2010-03-31

国連平和維持活動(PKO)は、第二次世界大戦以降の国際紛争解決において重要な役割を果たしてきた。中国のPKO への参加は、その設立創成期から始まったとは言えない。中国は国連安全保障理事会の常任理事国であるために、東西冷戦期においてミドルパワー主体であったPKO には必然的に消極的であった。中国は、また伝統的に国家主権や内政不干渉の政策を採っていたのもその一因である。しかし東西冷戦終了後、中国は、それまでのPKO 政策を見直し、PKO に積極的な姿勢を打ち出している。その結果中国はカンボジアや東ティモールにおけるPKO に参加を果たし、現在の中国は世界有数のPKO 派遣大国となり、主にアフリカ諸国への派遣が目覚しい。そのような中国のPKO 参加への柔軟的な姿勢は、政治的な現実主義や理想主義、あるいは国際的あるいは国内的な視野のバランスの取れた政策によることができよう。そして昨今のPKO 派遣における様々な統計を考慮した場合、中国はアジアを中心とした国際安全保障体制に更なる注目を寄せるべきである。たとえば中国は、アジア地域の平和構築体系の設立において中心的な役割を果たすことが期待される。