著者
Eiichi TAHARA Tadamichi MITSUMA Yutaka SHIMADA Takashi ITOH Katsutoshi TERASAWA
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
Kampo Medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.341-348, 1997-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

今回我々はバセドウ病による甲状腺機能亢進症に対して抗甲状腺剤を用いることなく, 漢方方剤のみによる治療を行い, 寛解に至った症例を報告した。症例1は47歳, 女性。約2年前より動悸, 体重減少, イライラ感, 耳鳴, めまい感など多愁訴。TSH低値, fT3・fT4・TBII高値, 123I 24時間摂取率高値からバセドウ病と診断。動悸などを目標に炙甘草湯を処方。その後証に応じて柴胡加龍骨牡蛎湯などを併用した。1年10ヶ月後には, TSH, fT3, fT4, TBIIとも正常化し, 以後現在まで正常域。症例2は40歳, 女性。3年前より動悸出現。近医で甲状腺機能亢進症を指摘され, 約2ヶ月間チアマゾールを内服。初診時TSH低値, fT3・fT4正常, TBII高値。動悸などを目標に炙甘草湯を処方。約3週後にチアマゾールを自己中止。証に応じて柴胡加龍骨牡蛎湯などを併用した。fT3, fT4は徐々に増加したが動悸は消失。10ヶ月後からfT3・fT4は徐々に低下傾向にある。甲状腺機能亢進症に対して抗甲状腺剤を用いることなく, 漢方治療のみで寛解に至らしめ得る病態のあることが示唆された。