著者
Katsuyuki V. Ooyama
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.369-380, 1982 (Released:2007-10-19)
参考文献数
23
被引用文献数
48 225

航空機観測の進歩に伴ない,台風の一般構造およびエネルギー収支については,1960年代の初めごろまでに.かなりよくわかってきた。しかし,これらの知識を力学的に統一して台風の生成発達を説明する理論は容易に生れなかった。現在の台風理解の因となった最初の発達理論が出るためには,力学的問題としての台風の認識,特に種々の要因の相対的重要度,を再考する必要があった。雲のパラメータ化が成功の原因のように云われるが,実は,問題認識上の変化がそのような雲の扱いを一応許されるものとした。雲のパラメータ化を技術的にのみ応用すると,その後の種々の線型理論(いわゆるCISK)に見られるような物理的混乱を引きおこす。一方,台風の理解のためには,線型理論は不充分であり,理論の概念としての妥当性および限度は非線型数値モデルによる実験によってのみ評価されることとなった。数値モデルの進歩により,台風成生の理解のためには,雲のパラメータ化を取り除く必要があることもわかってきた。この論文は,歴史を逆転するかの如く見える最近の発展の裏にある真の進歩を概念的に解明することを目的とする。