著者
川出 真清 Kawade Masumi
出版者
新潟大学経済学会
雑誌
新潟大学経済論集 (ISSN:02861569)
巻号頁・発行日
no.87, pp.185-204, 2009-09

本論は2009年に決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」に基づき、財政再建の先送りとその影響について、世代間および世代内の格差に与える影響を評価する。具体的には、日本の人口動態や日本経済の技術進歩などを導入した世代重複型応用一般均衡モデルである川出(2007)に、世代内の生産性格差を導入し、公共支出がその生産性に影響を与えるよう拡張した。この拡張により従来の公共投資の生産性効果のみならず、短期的な就業機会の影響もあわせて考慮する。その結果、現在の財政再建先送りは①低生産現役世代のみに便益をもたらすこと、②財政再建の際に公共投資を用いることは減税に比べ、低生産現役世代の便益ではなく他の世代の負担を軽減するのに役立つ、などの結果を得た。