著者
吉川 和子 ヨシカワ カズコ Kazuko YOSHIKAWA
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-54, 2011-10

『天使の戦い』の後,『ガラスの動物園』で,ブロードウェイで大成功を収めた詩人であり,劇作家であるテネシー・ウィリアムズは,1911年ミシシッピー州コロンバスに生を受けた。作家が生まれ育った環境に大きく影響されるのは当然であり,ウィリアムズもまた,生まれ育った牧師館での祖父の宗教感覚と共に南部という環境に大きく影響を受けている。また,その後工業の街セントルイスに引っ越し,そこでの経験や環境の違いなどが彼の描く作品に色濃く反映されている。彼の作品の中で主人公は,自らの心に忠実に生きようとするが,彼らを取り巻く過酷な現実や繊細すぎる神経のため,正気を失っていく。彼らを閉じ込める状況は,閉塞感(=Confinement Imagery)としてウィリアムズ作品での重要なテーマである。本稿では,近親相姦的愛と罪の意識に注目し,その要素が顕著に描かれている『ガラスの動物園』と『欲望という名の電車』及び『二人だけの芝居』を考察することによって,作品の重要なテーマである閉塞感と今もなお上演される彼の作品の魅力を論じてゆく。