著者
Keisuke UEDA
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
Japanese Journal of Ornithology (ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2-3, pp.23-31, 1985-12-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

1978年から1982年にかけて大阪府和泉市信太山丘陵においてセッカ Cisticola juncidis のオス個体群を個体識別し,その求愛巣の造巣活動を調べた.(1)なわばりオスは渡来の約1か月後から造巣活動を開始し,8月の下旬まで巣をつくり続けた.造巣活動は終日行われた.(2)ほとんどのオスは,メスにうけいれられなかった古い巣をこわし,新しい巣の材料に使った.この行動は巣材であるクモの卵嚢の不足によるものと思われた.(3)巣は主にイネ科植物の生の葉を綴ってつくられていた.発見した639巣のうち,メリケンカルカヤにつくられたものが41.9%,チガヤが34.0%,ススキが11.3%であった.(4)巣は平均して地上から約20cmのところに造られていた.巣の高さは季節とともに高くなる傾向がみられた.(5)巣の入口は主として東向きであった.この傾向は西風による草の傾きによるものと思われた.(6)1これらの結果は,長野(母袋,1973)や兵庫(小林,1983)での観察にほぼ一致した.