著者
柴田 仁夫 Kimio SHIBATA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University (ISSN:21884803)
巻号頁・発行日
no.16, pp.67-80, 2016-12

近年企業不祥事や不正が後を絶たず、その結果として経営理念、特に経営理念の浸透に注目が集まっている。経営理念に関しては既に多くの研究がなされているが、CSRと経営理念や中小企業を対象とした実証研究は非常に少ない。本稿による調査の結果次の点が明らかとなった。CSR実践企業の経営理念はステークホルダーを重視しており、経営者本人が経営理念を策定している場合は、保守的な傾向はあるもののその変更も厭わない。また経営者は理念の浸透の評価を顧客や社会といった外部の判断に委ねており、これは自社が社会にどう受け止められているかを重視しているためと考えられる。最後に、経営者は経営理念の浸透が「知名度の向上」、「安定的利益の確保」、「企業価値の向上」、「事業の継続」、「社会的地位の向上」、「優秀な人材の確保」のすべてに影響を与えていると感じているため、経営理念の浸透活動に取り組んでいると考えられる。