著者
Koji Yasuda Danny W. Scott Hollis N. Erb
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-11, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
33

組織球性多核巨細胞(MHGC)は炎症性皮膚疾患に罹患した猫の皮膚生検標本において時折認められる。しかし,MHGCの出現率・出現細胞数や形態学的な型別に関する報告はない。そこで我々は,炎症性皮膚疾患に罹患した猫526例と健常な皮膚を有する33例の猫から採取した皮膚生検標本を用い,上述の点について検討した。その結果,炎症性皮膚疾患を伴う猫の7%(35/526例)で標本中にMHGCが認められた。肉芽腫性皮膚疾患におけるMHGCの出現率(32/125例)は,非肉芽腫性皮膚疾患における出現率(3/401例)と比べて有位に高値を示した(p<0.0001)。非感染性肉芽腫性皮膚疾患におけるMHGCの出現率(27/84例)は感染性肉芽腫性皮膚疾患(5/41例)と比べて有位に高値を示した(p=0.016)。MHGCの出現が見られた35例の全てにおいて,異物型MHGCが見られた。ラングハンス型MHGCが見られたのは,この35例中2例のみであった。健常な猫の皮膚ではMHGCは認められなかった。以上より,MHGCの出現数や形態学的型別には明らかな診断学的意義が認められないことが示された。