著者
田邊 久美子 Kumiko Tanabe
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.171-180, 2017-03

19世紀イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレイによる感傷的な幼児の肖像画は「ファンシー・ピクチャー」と呼ばれ、大変需要が高かった。特に例に挙げられるのは、Cherry Ripe と広告にもなったBubbles である。ファンシー・ピクチャーは実人生を描くのではなく、道徳的意味合いを含まない空想を描いた。ヴィクトリア朝の大衆は広告や複製画でミレイのファンシー・ピクチャーに大いに慣れ親しみ、Bubbles やCherry Ripe といった絵が印刷された商品や複製画を購入して消費に参入した。ミレイのファンシー・ピクチャーの中で、もっともコマーシャリズムや消費と関連しているのがBubbles であり、ハイ・アートとして製作されたミレイの作品が、本人の意図と関係なく、広告にされてしまった。この件を巡り、ハイ・アートとロー・アートの関係について議論がなされたことについて、ハイ・アート、消費、コマーシャリズムの関連について論じている。