著者
遠藤 明仁 Leon M.T. Dicks
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.152-159, 2008 (Released:2010-09-29)
参考文献数
52
被引用文献数
2 2

Lactobacillus属細菌は発酵食品や動物消化管など幅広い環境に生息している細菌群であり、それらが持つ有益な働きから、乳酸菌の発酵食品や宿主の健康への影響を研究する上で、非常に重要な細菌群の一つである。現在、Lactobacillus属は 100 種以上の膨大な数の菌種で構成されており、それらの菌種は系統的に多岐に渡っている。前述の通り、Lactobacillus属細菌は産業にとって非常に重要な細菌群であるため、Lactobacillus属の系統的関係を扱った総説はこれまでに多くある。しかし、近年では毎年 10 菌種程度がLactobacillus属の新菌種として提案されているため、最新のLactobacillus属菌種の系統樹は、種間の系統関係の正しい把握のために大きな意味をもつ。更に、膨大なLactobacillus属の中には、通常言われているようなLactobacillus属の特徴と大きく異なる非典型的な特徴を持つ菌種も報告されているが、これらはこれまでの総説では全く扱われていない。そこで本総説では、Lactobacillus属菌種の最新の系統的位置関係とともに、特定の菌種のみが持つ非典型的な特徴について概説した。