著者
林 泉忠 Lim Chuan-tiong
出版者
林泉忠
巻号頁・発行日
2010-04

平成17年度~平成19年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(海外))研究成果報告書 研究概要:(平成19年度時点)19年度は、本研究プロジェクト「『辺境東アジア』住民のアイデンティティをめぐる国際比較調査研究」の3年目で、予定通り、沖縄での調査をはじめ、台湾政治大学と香港大学の協力を得て、11月に沖縄、台湾、香港、そしてマカオにおいて電話による同時アンケート調査を順調に実施した。過去2年間の質問を踏襲した上で、四地域それぞれの特性を考慮し地元に関する質問を大幅に増やした。調査は、文化的・民族的帰属意識と政治的・国家的帰属意識と大きく二つのカテゴリーに分類して行った。調査結果に関しては、過去2年間のそれに比べ、四地域それぞれ若干の変化が見られると同時に、アイデンティティ構造は四地域共に比較的に安定していることが調査から分かった。すなわち、エスニック・アイデンティティに関する質問群の回答結果から、地元意識の強い順は、台湾・沖縄・香港・マカオとなり、またナショナル・アイデンティティについて、国・中央政府への求心力の強い順は、マカオ・沖縄・香港・台湾になっている。とりわけ、若者の政治的自立志向に関して、台湾は最も強く、最も弱いマカオや沖縄と対照的な結果になった。 3年目の調査結果の一部はすでに11月27日に沖縄県庁にある記者クラブで開かれた記者会見で公表し、台湾と香港の協力機関もそれぞれ現地のマスコミに報告した。沖縄では、沖縄タイムス、琉球新報、RBC(TBS)ラジオ放送、RBCテレビ放送の取材も受けた。また、学術報告に関しては、アジア政経学会、青山学院大学国際研究センター、JICA移民資料館、台湾政治学会、WAPOR Regional Seminar(インド)、北京大学、南開大学(天津)、復旦大学(上海)、上海師範大学などで、調査で得た知見に基づき、研究発表を行った。さらに、三年間の研究成果として報告書をまとめ、「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを呈示している。 未公開:P.25以降(別刷論文のため)