著者
林 泉忠
出版者
一般財団法人 アジア政経学会
雑誌
アジア研究 (ISSN:00449237)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.48-67, 2017-01-31 (Released:2017-03-24)
参考文献数
31

The aim of this paper is to raise a new concept; namely, the “China Rise Syndrome”, which is based on the concentric spreading characteristics for analyzing the phenomena of the conflicts in four different levels due to the rise of China. The paper emphasizes the steadfast rejection of democratization under the circumstances of rapid growth of power is the origin of the syndrome. Before the rise of China, the negative influence exercised by the authoritarian CCP was only limited in mainland China. However, it has been spreading quickly to other territories outside the country while corresponding with the growth of China’s power; firstly, Hong Kong; secondly, Taiwan; thirdly, the neighboring countries with which China has sovereignty disputes over the nearby islands, and lastly, the rest of the world. In this period, CCP‘s China backed by her exponential growth of political, economic and military power tends to press severely her ideology against the challenges from the outside world, thus inducing varied conflicts. There are three major findings in this paper: Firstly, Hong Kong and Taiwan, China’s “closest peripheries”, experience interferences and threats from China much more directly and fiercely than others, and on the other hand, were also driven to the most intense rebellions. Secondly, although China claims her territorial sovereignty on both Hong Kong and Taiwan simultaneously, the speed of Chinization in Hong Kong is faster than Taiwan which is still cherishing her independence from China. Thirdly, with the Chinization phenomena in Hong Kong and Taiwan and the anti-democracy virus of China Rise running alongside, the people’s local identity and the centrifugal force away from China in both societies have been staying at the strongest in history. This paper lays stress upon the phenomena of Chinization and the rebellions against China in both Hong Kong and Taiwan are the paramount observation points in understanding how the Chinese Value, the Chinese Model, and the Chinese System in the era of China Rise spread externally, and how do they induce misgivings, tension, threats, panic and collision with the outside world and how do they influence the world order.
著者
林 泉忠 Lim Chuan-tiong
出版者
林泉忠
巻号頁・発行日
2010-04

平成17年度~平成19年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(海外))研究成果報告書 研究概要:(平成19年度時点)19年度は、本研究プロジェクト「『辺境東アジア』住民のアイデンティティをめぐる国際比較調査研究」の3年目で、予定通り、沖縄での調査をはじめ、台湾政治大学と香港大学の協力を得て、11月に沖縄、台湾、香港、そしてマカオにおいて電話による同時アンケート調査を順調に実施した。過去2年間の質問を踏襲した上で、四地域それぞれの特性を考慮し地元に関する質問を大幅に増やした。調査は、文化的・民族的帰属意識と政治的・国家的帰属意識と大きく二つのカテゴリーに分類して行った。調査結果に関しては、過去2年間のそれに比べ、四地域それぞれ若干の変化が見られると同時に、アイデンティティ構造は四地域共に比較的に安定していることが調査から分かった。すなわち、エスニック・アイデンティティに関する質問群の回答結果から、地元意識の強い順は、台湾・沖縄・香港・マカオとなり、またナショナル・アイデンティティについて、国・中央政府への求心力の強い順は、マカオ・沖縄・香港・台湾になっている。とりわけ、若者の政治的自立志向に関して、台湾は最も強く、最も弱いマカオや沖縄と対照的な結果になった。 3年目の調査結果の一部はすでに11月27日に沖縄県庁にある記者クラブで開かれた記者会見で公表し、台湾と香港の協力機関もそれぞれ現地のマスコミに報告した。沖縄では、沖縄タイムス、琉球新報、RBC(TBS)ラジオ放送、RBCテレビ放送の取材も受けた。また、学術報告に関しては、アジア政経学会、青山学院大学国際研究センター、JICA移民資料館、台湾政治学会、WAPOR Regional Seminar(インド)、北京大学、南開大学(天津)、復旦大学(上海)、上海師範大学などで、調査で得た知見に基づき、研究発表を行った。さらに、三年間の研究成果として報告書をまとめ、「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを呈示している。 未公開:P.25以降(別刷論文のため)
著者
林 泉忠
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は研究代表者が提起した「辺境東アジア」という東アジア研究の新たな地域概念(『国際政治』135号掲載)に基づき、「中心」と「辺境」、「近代」と「前近代」が交錯し衝突する過程において現出した「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを解明するため、17年から19年まで三年連続、沖縄、台湾、香港そしてマカオにおいて、住民のアイデンティティ構造・特徴・要因を中心に、国際調査を行った。この四地域においてアイデンティティに関する国際調査は初めてとされる。調査は、琉球大学のほか、香港大学、台湾政治大学の専門調査機関の協力を得て、毎年の11月に、同時に、18歳以上の現地住民を対象に、それぞれ20以上の設問(一部は共通質問)を設け、電話調査を行い、それぞれ1000以上の有効サンプルを集めた。調査から得た主な所見は、1.帰属意識の構造に関し、四地域は、共に、複合的アイデンティティをもつ社会である。2.地元社会のへ愛着度やエスニック・アイデンティティについては、四地域は共に強いが、沖縄の方が特に強い。3.自立意識やナショナル・アイデンティティに関し、台湾が最も高く、ほかの三地域に広い差を付けた。4.若い年齢層は、他年齢層よりアイデンティティの複合性と流動性が高い、などである。調査結果に基づいた分析は、アジア政経学会、台湾政治学会、ハーバード大学フェアバンク研究センターおよびイエンチン研究所、北京大学、復旦大学、台湾大学、台湾交通大学をはじめ、日本、台湾、香港、韓国、インド、アメリカ、スイスなどの20以上の学術機関において発表を行った。また、書籍(共著)5冊、学術論文8本、新聞・雑誌記事20本を日本語、中国語、英語で出版した。なお、社会に報告するため、毎年、調査を行った翌月に、沖縄、台湾、香港、マカオ四地域の主要メディアに公表し、高い注目を受け、反響を及んだ。