著者
平松 隆円 B. Ed. M.A. Ed.
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.630-639, 2006-11-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
15

1920年代から『婦人画報』などの一部の婦人雑誌で批判され, 谷崎潤一郎の『細雪』などにも描かれた公衆場面での化粧行動であるが, 1990年代に入ると再び社会的な話題となった.若者たちは, 公衆場面で化粧を行うことをどのようにとらえているのか, 本研究では大学生762名 (男性414人, 女性348人) を対象に, 化粧行動の許容に関わる公衆場面の構造を明らかにし, 個人差要因との関連性について検討を行った.1) 8項目の公衆場面それぞれについて, 7項目の化粧行動を行うことをどの程度許容できるか, 因子分析により構造化を試みた結果, 『電車・駅での化粧』『化粧品コーナーでの化粧』『友人の家での化粧』『多場面でのリップクリーム』『授業中教室での化粧』『学食での化粧』『休み時間教室での化粧』『多場面での油とり』『飲食店での化粧』が明らかとなり, その構造は場面により構成されていることがわかった.そして, 『授業中教室での化粧』『友人の家での化粧』『多場面でのリップクリーム』『多場面での油とり』について, 許容に男女差のあることがわかった.2) 男性では私的自意識や外的他者意識が, 女性では外的他者意識や公的自意識や私的自意識が化粧行動の許容に影響を与えることから, 自己や他者の外面への注意の向けやすさだけではなく, それに伴う態度と行動の一貫性や非一貫性などが, 化粧行動の許容に影響していることがわかった.