著者
MARK H・B・Radford 中根 允文
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の第一段階として文化と価値および行動の関係を明らかにした。SMGC及び従来の測定法により測定された文化と,自己の文化への同一化,および個人の価値システムとの関係を明らかにするための研究を行った。この目的のため,平成3年度に開発されたSMGC及び従来の文化測定法を札幌と長崎の学生に適用すると同時に,価値の普遍的心理構造を測定するため価値尺度を用いて,調査対象者の価値システムを測定した。また同時に,文化と価値が行動に及ぼす影響を調べるため,意志決定行動のいくつかの側面を測定するための尺度を実施した。本研究の第二段階として意志決定様式の文化差を説明する原理を主観的測定法を用いて測定された文化内容から引き出せるかどうか検討を行った。このため上の調査で明らかにされた正常人の文化概念とうつ病患者の持つ文化概念を比較検討し分析の手がかりを得ることをめざした。具体的には長崎大学医学部付属病院の入院および外来の精神病患者とその家族を対象として,彼らの価値体系及び精神病に対する知覚を測定した。この研究にあたっては,伝統的コミュニティーの間で異なった価値体系が存在しており,かつ精神病患者の症状に特徴の多く見られる五島列島の患者が中心となった。同時に,それぞれのコミュニティーの文化の特徴の測定を行い,文化と精神障害の関係を明らかにした。