- 著者
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鹿島 正裕
Masahiro Kashima
- 雑誌
- 放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, pp.125-139, 2016-03-25
1989年に東欧で起こった民主化の波は、ほとんどの諸国を平和裏に自由民主主義国へと導いたが、2011年に一部のアラブ諸国で起き始めた民主化の波は、4国で独裁政権の崩壊をもたらしたものの、多くのアラブ諸国においては政権の若干の譲歩か弾圧によって抑え込まれるか、内戦をもたらしてしまった。民主化し始めた4国でも、チュニジア以外では権威主義政権の復活や内戦に至り、今のところ失敗に終わっている。この両地域の顕著な相違を説明するために、民主化に関する近年の理論的研究を参照して比較の枠組みを設定したうえで、両地域の①民主化前の状況、②\n民主化の波、③その後の展開を概観する。そして統計的データも参照し、(1)国家のあり方──政治秩序の類型、政府の機能、民主的価値観の普及度、エリート層や軍部の内情、(2)社会のあり方──所得向上と中間層の増大、市民社会化、宗教的寛容度、ジェンダー間の平等度、天然資源への依存度、青年層の不満度、(3)外国の影響──大国の関与、近隣諸国の民主化、コミュニケーション手段の発達、の諸要因を比較する。東欧諸国の成功とアラブ諸国の失敗はそれらによってよく説明され、アラブ諸国の今後の民主化可能性にも示唆を得られる。