- 著者
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森脇 由美子
Moriwaki Yumiko
- 出版者
- 三重大学人文学部文化学科
- 雑誌
- 人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, pp.133-146, 2009-03-31
19世紀の第二・四半世紀のアメリカでは、都市労働者たちの間で新たなヒーローたちが登場した。これは彼らが市場革命や都市化の波にさらされる中で、従来のヒーロー像とは異なる存在に自らのアイデンティティを求めたからである。市場革命の進行にともない、ニューヨークのようなヨーロッパの大都会に匹敵する都市がアメリカにも出現し、都市の中に圧倒的に労働者階級的な娯楽の場が形成された。そこではスポーツ・ヒーローとしての拳闘家や、労働者階級化した劇場の人気俳優および登場人物などが、新たなヒーローとして人々喝采を浴びた。さらに政治の領域でも、選挙権の拡大によって労働者階級まで選挙権を持つと、魅力ある人物として人々の心に訴えかける手法がこれまで以上に重要性を持つようになり、マイク・ウォルシュのような新たなタイプの政治家が登場することになる。しかし、これらの労働者階級のヒーローは階級的性格が強かったため、結局、「国民的」ヒーローとまではなりえず、人々の記憶に長くとどまることはほとんどなかった。