- 著者
-
K.L. Carraway
N. Fregien
伊藤 ユキ
- 出版者
- FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
- 雑誌
- Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.33, pp.31-44, 1995-01-02 (Released:2010-01-05)
- 参考文献数
- 84
- 被引用文献数
-
20
19
ムチンは高度にOグリコシル化された糖タンパク質で、細胞外からの作用物質に対する細胞の保護に関与していると考えられている。ムチンは、分泌型ムチンと膜結合型ムチンの二種類が知られている。ほとんどのムチンは、分子の中央に縦列反復配列 (tandem repeat) 構造の領域を持つが、この部位はセリンとスレオニンに富み、ムチンの種類により長さが大きく異なっている。多くのムチンにはシステインに富むドメインもある。反復配列は、ひとつのムチン分子中では、ヒトMUC1タンパク質分子のように、多くの場合保存されている。しかし二種間では、例えば、マウスのMUC1タンパク質とヒトMUC1タンパク質の反復配列のように、ほとんど保存されていない。ムチンの多くは反復配列の数に違いがあるために多型であり、ムチン遺伝子の転写産物は多くの場合不均一である。ムチンは組織特異的に発現しているものが多いが、MUC1やMUC2のようにいくつもの組織でみられるものもある。一つの組織が一つ以上のムチンを発現している可能性もある。これまでに得られた範囲の研究からも、ムチンの発現制御は複雑であることがわかる。膜結合型ムチンは細胞間相互作用を調節することにより発生や腫瘍の進行に関与しているのではないかと考えられている。ある種のムチンのシステインに富むドメインは、細胞増殖の制御に役割を果たしている可能性もある。組み換えDNAプローブを用いた研究が、このムチンという複雑な分子に対する理解を大いに深めることは疑いない。