著者
山田 寛 NAIWALA PATHIRANNEHELAGE CHANDRASIRI
出版者
日本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

表情応答を行う刺激人物の視覚的特性についての検討を行うことの重要性を認識し、平均顔の視覚的特性について吟味する心理工学的実験も行った。より具体的に問題としたのは、二枚の顔画像の平均顔画像が人間にとっても平均として認識されるかという点である。この検討を行うにあたり、まず顔画像サンプルの全てのペアの平均顔画像を作成した。次に、実験参加者に、ある平均顔画像とその元の二つの顔画像を提示し、平均顔画像の全体的な印象から、それがどちらの元画像に似ているか判断させる実験を実施した。平均顔画像が知覚的にも平均の顔として認識されているならば、実験を通じてどの元画像も同一割合で選択されると仮定される。しかし、結果として、それぞれの元画像が選択された割合には顕著な差が現れた。この点を検討する上で顔画像の主成分分析を行い,shape-free eigenface methodに基づいた顔空間を作成した。そこで顔空間での各顔画像の原点からの距離とその顔画像が選択される割合との間の相関分析を行ったところ、両者に高い相関が認められた。この研究は、心理学における顔研究の中での一つの重要な研究課題となっている人物の顔の特異性の問題を解明する上でのきわめて重要な手がかりを提供するものといえる。PFES(Personal Facial Expression Space)に基づく顔表情分析・合成システムを構築した。さらにシステムの表情応答分析能力を確認するための表情同調反応実験を実施した。まず3次元構造を持つ顔モデルをベースに、モーフィングの技法を用いて変形させた顔画像の合成を行う。実験では、フレームの時間制御を行うことによって、さまざまな変化速度の条件のアニメーションを実験参加者に提示できるようにした。また、システムでは、そのアニメーションをモニターに提示しながら実験参加者の表情応答を分析することができる。実験の結果として従来の研究ではほとんど扱われてなかった顔表情応答の表情の強度とタイミング情報までを取得できることが確認できた。さらに、これまでの心理学研究において現象として報告されている、喜びと怒りの表情の同調反応の確認も行い、その同調のパターンの詳細な分析を行い得る可能性が示された。