著者
NGUYEN V. Chuyen 川上 正舒 黒木 昌寿
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究において、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンは酸化反応および白内障の進行を効果旨的に抑制するという結果を得ていることから、他の食餌性抗酸化剤の併用による糖尿病合併症の抑制効:果について明らかにすることとした。即ち、アスタキサンチンとアスコルビン酸、α-トコフェロール、トコトリエノールの各抗酸化剤の併用による効果について検討した。その結果、アスタキサンチンとトコフェロールあるいはトコトリエノールを併用した場合では、対照群に比し酸化抑制が観察された。また、酸化ストレスの指標となる尿中8-OHdGの低値も観察された。一方、アスタキサンチンに高濃度のアスコルビン酸を併用した場合では、腎臓中の過酸化脂質生成量が多く、過剰なアスコルビン酸の摂取は、生体内における過酸化反応を促進する可能性があることが明らかとなった。また、アスタキサンチンには、体内におけるα-トコフェロールの消費を抑制し、体内に蓄積させる作用があることも示された。さらに、アスタキサンチンと水溶性抗酸化剤のフラバンジェノールの併用による糖尿病の進行抑制効果を検討した。その結果、糖尿病ラットにおいて、肝臓、腎臓および血清において、アスタキサンチンとフラバンジェノールを併用した場合では、対照群に比べて脂質過酸化反応および白内障の抑制がみられた。また、尿中8-OHdGも低値を示したことから、これらの抗酸化剤の併用は、酸化ストレスの抑制により、生体組織中の過酸化脂質の生成および蓄積を有効に抑制しうることが示唆された。さらに、血清中の中性脂肪値についても、アスタキサンチンとフラバンジェノールの併用により低くなる傾向が示され、糖尿病における脂質代謝異常を改善させる可能性が示唆された。これらの結果から、アスタキサンチンとフラバンジェノールの併用は、糖尿病による生体内の過酸化反応を有効に抑制し、糖尿病およびその合併症の予防・進行抑制に効果を示すことが期待された。今後、糖尿病の予防法と治療法の開発が大きな課題となると考えられ、本研究の成果がその一助となることを期待する。なお、病院での臨床試験は2007年中に行う予定である。