著者
Naoki Itano
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.16, no.89, pp.199-210, 2004-05-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
55
被引用文献数
6 6

ヒアルロン酸は生体に広く分布している主要な細胞外マトリックス成分として、組織の構造維持に重要な役割を果たしている。この糖鎖は支持構造としての機能以外にも、受容体との相互作用により細胞内シグナル伝達系を活性化して細胞の増殖や運動、分化など動的な細胞活動を調節している。ヒアルロン酸は、その糖鎖合成異常が癌の進展と密接に連動して認められることから、大きな注目を集めている。近年、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現を人為的に改変する一連の試みにより、細胞の癌化促進に働くヒアルロン酸の役割が明らかにされつつある。本総説は、ヒアルロン酸合成の機構解明に向けた最近の知見を引用しつつ、ヒアルロン酸合成と癌の進展との密接な関係を概説する。そして、ヒアルロン酸合成阻害に基づいて癌の進展を阻止する治療薬開発の可能性についても言及する。