著者
Arum Widayati Kanthi Rianti Puji Tsuji Yamato Sofiana Nugraheni Latif Nila Sarah Fadli Rahman Muhammad Purnomo Sugeng
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.224-232, 2020

<p>我々の研究の目的は,インドネシア西ジャワ州・テラガワルナのエコツーリズムサイトで,人間活動がここに生息するカニクイザル(<i>Macaca fascicularis</i>)の行動にいかに影響するかについての科学的なデータを提供することである.人間活動のレベルが異なる3つのタイプ(平日:42日,週末・祝日:33日,ラマダン期:24日)の計425時間にわたってサルを観察し,サルの行動がタイプ間で異なるか否かを検討した.観光客の1日当たりの平均数は平日が103.3人,休日・祝日が232.2人,ラマダン期が36.8人だった.ラマダン期は,サルの移動割合が他のタイプに比べ有意に高く,逆に休息割合が低かった.このことは,サルが観光客の数に応じて自らの行動を変えていることを示唆する.行動観察と並行して,304人(観光客:162人,住民:131人,管理作業員:11人)にサルとの軋轢に関するインタビューを実施した.サルによるトラブルの多くは食物に関するものであった.サルとヒトとの間に軋轢はないとする回答が70%を占め,またサルに餌を与えたいと考える人が多かった.多くの人は人獣共通感染症のリスクを知らなかった.将来的に,人とサルとの軋轢が強まることが懸念される.(推薦者:辻 大和 訳)</p>