著者
岡本 宣雄 Okamoto Nobuo
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.37-48, 2013

スピリチュアリティは,人が生きるうえでの価値や感情,認識,行為に影響を与える.本稿は,文献研究を通しスピリチュアルな存在として生きる高齢者像を把握するため,高齢者の Spiritual well- being を取り上げ,心理的な見地より考察する.また,Spiritual well-being の内容を類型化し構造的 に捉え,この概念の特徴について検討する.その結果,スピリチュアリティならびに Spiritual well-being に含まれる「超越性」の特質と超越 性を有し生きる高齢者の特徴が明らかになった.また,この Spiritual well-being が表わす状態や 行為は,「関係」(究極的な他者・他者や自然・自己)と「時間」(過去・現在・未来)で構成され ることが明らかになった.加えて,高齢者のスピリチュアルなテーマと課題の検討から,高齢者の Spiritual well-being には,「意味への充足と応答」の内容が含まれることが示唆された.高齢者の Spiritual well-being は,意味探求の対象(究極的な他者・他者や自然・自己)との関係,人生という 連続する時間のなかで,高齢者が超越的な存在として自身の生を肯定した状態として理解できる.ま た,この概念は,人生の窮状においても,それに意味付をし,価値ある存在としてその生を肯定でき る,逆説的な生き方ができる人間の特性を含んでいる.以上のことから,筆者は,Spiritual well-being を「Spiritual well-being は,自己,他者,自分より 偉大な存在との結合により,連続した時間のなかで,人生の窮状においてもなお,意味が与えられ, 自らの人生を肯定する人間の生の側面である」と定義付ける.本稿の Spiritual well-being をめぐる 高齢者の実像に迫る考察と構造的理解は,生活課題に直面した高齢者の実像を把握するアセスメント 票の開発に有益である.