著者
城山 智子 PENG Juanjuan PENG JUANJUAN
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、裕大華紡績公司の1880年代から1960年代までの事業展開を事例として、近現代中国に於ける企業の態様を明らかにしようとするものである。本研究は、特に、裕大華が、現代中国で「集団」と呼ばれる、多業種にまたがる複数の会社の集合体のプロトタイプと看做されることに注目している。清朝から中華民国を経て中華人民共和国に至る政治体制の変化の下で、企業への投資と経営とがどのような変容を遂げたか、という時系列の分析を行うと同時に、日本の財閥や韓国のチョボルといったアジアの企業形態との比較から、中国の企業の特質を明らかにし、平成22年度は、平成21年度の資料調査の成果を踏まえて、事例研究をまとめた。6月には台湾中央研究院近代史研究所で、中華民国期の産業振興に関する資料調査、7月には京都大学経済学部図書室で戦前期中国企業に関する調査報告の収集を行い、より網羅的なデータの収集を行った。また現代中国史研究会では研究発表、"Crossing the 1949 divide : changes and continuities in a Chinese Textile Company"(一个中国紡績企業在1949年前后的変化与延續)を行い、武漢、石家荘、西安、重慶、成都で展開した、裕大華紡績公司の事業について、20世紀委はじめから1950年代までを対象として分析した結果を明らかにした。そこでは、1920年代には未整備だった企業をめぐる経営環境が、1930年代の法整備を経て、1940年代の戦時統制下で大きく政府・党の影響を受けるようになり、さらに、そうした傾向が1950年代の中国共産党政権下でも引き継がれたことを論じた。