著者
河名 俊男 Paolo A. PIRAZZOLI
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.135-141, 1984-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

琉球列島の宮古諸島に分布するノッチおよびビーチロックの調査により,現海面が完新世の最高海水準を示すとの結論を得た。ノッチの後退点高度は潮間帯に位置し,ビーチロックは潮間帯あるいは,ほぼ潮間帯ビーチロックを示す。潮間帯ビーチロックの2ヵ所から, 425±70 y. B. P., 1520±60 y. B. P. (Loc. 13) および2120±75 y. B. P. (Loc. 31) の年代値が得られた。以上のビーチロックおよびノッチの諸特徴より,宮古諸島における後期完新世の海面は少なくとも2100年前より現在まで,現海面にほぼ近い位置に存在していたと推察される。上記の海面変動は,琉球列島の他の主軸諸島に見られる後期完新世の高海水準を示す海面変動と対照的である。以上の対照性は,後期完新世に宮古諸島が他の主軸諸島と異質の地殻変動地域であった可能性を示唆する。