- 著者
-
山崎 大
Pavelsky Tamlin
- 雑誌
- JpGU-AGU Joint Meeting 2017
- 巻号頁・発行日
- 2017-03-10
SWOT (Surface Water and Ocean Topography)は、米国NASAとフランスCNESが2021年に打上げを予定している次世代衛星高度計ミッションであり、海域および陸域の水面標高の詳細な時空間分布の計測を目的としている。Envisat RA2・Cryosat・Jason 1/2などの既往の衛星レーダー高度計は機体直下の水面標高をレーダーパルスで観測する「Nadir Altimeter」であったが、SWOTでは合成開口レーダー干渉計を用いて水面標高を高解像度で2次元的に計測する「Swath Altimeter」である。SWOT衛星は高度約890km太陽非同期の約21日周期軌道で、北緯78度〜南緯78度を観測範囲とする。観測幅(Swath width)は衛星軌道直下の約120kmで、観測範囲内の陸域と海域をほぼ欠損域なくカバーする。陸域においては河川や湖沼など小さな水体を捉えるため100m未満の高解像度で観測を行い、海域においては黒潮などの中規模渦を主要なターゲットとして約500m解像度で観測を行う。 とりわけ陸域に関しては、海洋と比較して河川や湖沼などの水体は空間スケールが非常に小さいため、SWOTによる高解像度の水面標高観測は地表水動態の理解を劇的に進めることが期待されている。幅100m以上の河川と面積5ha以上の湖沼湿地を鉛直誤差10cm未満で観測することで、地表水の空間分布および貯留量の時間変化の推定を目指す。また、直接的な河川水位の観測に加えて、水面勾配も導出できるため、衛星観測からの河川流量の推定も計画されている。SWOTによる観測は、補助的な地形データやモデルと組み合わせることによって、湖沼や貯水池の水量変化、洪水と渇水の発生、湿地や氾濫原の水動態などの、地球規模での解明を進めると期待される。 2021年の打上げに向けて、機体や観測機器の開発だけでなく、観測誤差の推定、アルゴリズム開発、補助的なデータ・モデルの準備が精力的に進められている。本発表では、SWOTミッションの概要について、主に発表者が関わっている水文研究に着目して俯瞰的に紹介する。